[doll]⑮登坂広臣 (ページ25)

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広臣side ページ25

※

「…昨日、寝れたか？」

シンさんと話ながら皆との距離を取る。

誰にも聞こえないように、かと言って内緒の話をしていると悟られないようにいたって普通に振る舞いながら

昨日の事をお互いに話し合う。

「まあ…寝れたって言えば寝れました…

　まさかの夢にまで出てきましたけど」

自分の弱さを隠すように苦笑いでカバーするけど、相手がシンさんじゃあやっても無駄か。

すぐに悟って、強がりを捨てた。

「正直、送り出してやる事が一番だってわかってますけど、こんなにしんどいとは思ってなかったんで、今にも引き留めに行きそうです」

いつの間にか花ちゃんも傍に来ていて、俺の話を聞いている。

その顔が妙に男らしくって、よりどころにしてしまいそうな予感。

「登坂…」

花ちゃんが男の声で俺を呼ぶ。

「俺ら、お前がAの事大事にしてくれてるの知ってるから、なんとかしてやりてぇって思うけど

　今のこの状況を考えると、俺達もAを海外に行かせるのがいいと思ってる。

　なにより、カワイイ妹の安全を一番に考えるのはアニキとして当然だと分かって欲しい」

お願いするような言葉に当然わかっていると言葉を返したいけれど

言えないのは素直じゃないからとかじゃなくって、ただ本当にあいつが好きなだけ。

でも言うよ。

「わかってます。だから昨日…別れました」

顔を上げていったつもりなのに、見えた景色は自分の足元だった。

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