[doll]⑮登坂広臣 (ページ19)

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広臣side ページ19

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重い扉の向こう。

まだ追いかければそこにAがいる。

走れば間に合うって頭がそう言ってるけど

追いかけても手放す事に変わりはないのだから、同じ思いを二度するだけ自分が苦しむという事だと冷静さがやってくる…。

最後はあいつがきっと泣くから

その涙を見たら俺も手放せなくなるから、気絶させるように眠らせて

覚えていない内に別れたというのに…。

あいつの涙の分、俺が泣くなんて…。

必死になってその思いを断ち切るように、伸ばしかけた手は扉を開くのではなく、重苦しい鍵をかける為。

ガシャンと少し乱暴にかけたそれは静かな部屋の中に響き渡り、寂しさを増長させるには十分。

玄関の白いタイルの上にボタボタと零れていくそれは、なんで溢れてくるのかわからない。

前に一度別れた時にはここまで自分が堕ちてはなかったのに、なんで今はこんなに悲しくて勝手に涙が零れていくのか…。

「嫌いになってくれたらよかったのに」

口をついて出た言葉。

…これが答えだった。

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