[doll]⑮登坂広臣 (ページ11)

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広臣side ページ11

※

心配そうにする隆二とまだ怒りが収まらないシンさんに視線だけを送って。

車から降りて、走り去るランクルのテールランプを見送った。

「行こっか」

ずっと黙ったままのAを連れて自宅に入る。

鍵を開けて

扉を開き…

中に入って締まる扉がまだその隙間を残してるっていうのに。

「話はあとで聞く。

　今は、彼氏として抱きしめさせて」

玄関で靴も履いたまま、ずっと会えなかったAが帰ってきた事だけを純粋に喜ぶように

小さな体を強く抱きしめた…。

おかえりって。

そう何度も心の中で思いながら、俺から離れていこうとしている事に蓋をして。

ただ、今だけはこの腕の中にAが帰って来た事を喜んだ。

そしていつしか頭の片隅に

俺が手放してやらないとっていう思いが生まれ始める。

そうしてやらないと、あいつの呪縛から逃れられないのがわかっているから

あの男から逃げるには、

俺が送り出してやる事だけしか道がないから…。

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