[doll]⑫登坂広臣 (ページ43)

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広臣side ページ43

※

「登坂、今市に連絡して無事かどうか確認」

○さんに言われて慌てて携帯を取り出して隆二に電話を掛ける。

すぐに通話になった向こうでは特に変わらない返事が返ってきた。

「大丈夫そうです」

隆二の様子からまずは○さんにそれを伝えて。

シンさんは渚さんと一緒に足跡を追う。

「隆二、今あいつが中に侵入してきた」

今ここで起きた事を説明すると、電話の向こうでも緊張が走ったのが伝わってくる。

ただ、隆二達の所に来ていないとなると囮部屋にしてる所にまっすぐ向かった可能性が高い。

シンさんと渚さんが階段を登って行って数分。

○さんの携帯が鳴る。

「もしもし？」

短い言葉を何度か交わした○さんはすぐに電話を切って。

俺達に部屋に戻るように指示を出す。

「まっすぐAの部屋に向かってたって。でも鍵がかかってるからこじ開けようとしたけど無理だったみたい。

　で…厄介なのが、そこから足跡が消えたって事…」

どうやらAの部屋の前で鍵をこじ開けるのに動き回った形跡はあるものの、侵入の気配はないらしい。

ある意味では安心で

でもそれを思い切り塗り替えられる程の恐怖を残される。

その場からどこかに移動した足跡が一つもないという事実を。

侵入の痕跡を残しておきながら

移動の痕跡を見せないやり方。

「自分の存在を知らしめてきてるんすよ」

岩ちゃんも珍しく苛立ったような口調で言い放った。

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