[doll]⑫登坂広臣 (ページ23)

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広臣side ページ23

※

「登坂に危害が及ぶことに恐怖を感じてるんだと思うよ」

若干取り乱してる俺に、落ち着きのある○さんの言葉。

でも、内容が俺の事で一気に頭が冷えた。

「だってほら、あの子初めて人を好きになったんだからさ。

　その大切な人が、躊躇なく人を殺めそうなタイプの人に狙われるかもしれないって思ったら、例えそれが夢でも恐ろしくて恐怖でおかしくなっちゃうでしょ」

あれ以来言葉を交わしていなかった○さんの、俺を見る目は拗れる前と同じですげぇ優しくて。

Aの事を心底心配しているのと、俺の事も気にかけてくれているのが伝わった。

あの事は当然許せない事だけど、でもAが許した今俺が意地を張るのも変な話。

「…俺が狙われる事もあるんすかね…」

恐る恐る聞き返せば。

少しだけ言いにくそうに言葉を詰まらせた。

「出ちゃったからね…。婚約発表後に、Aの写真が…」

そう言われて、背筋が凍る。

そうだった。

Aの写真…俺の婚約者として隠し撮りされたものがネットに上がったんだ。

自分の方の事しか考えてなかったけど、あいつがあれを見ている可能性だってないわけじゃない。

って事は

「Aの婚約者が俺だって事も知ってるかもしれない…って事っすよね」

今まで静かだった元カレの存在。

静かだった分、今その片鱗をどこかに感じてとんでもなく大きな恐怖を植え付けてきた。

悔しいぐらいにはっきりと、しかもAの中にどっしりと根を張る形で…。

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