[doll]⑥登坂広臣 (ページ18)

今日:29 hit、昨日:2 hit、合計:571,360 hit

広臣side ページ18

※

「いねーよ」

短い返事。

「それってAで手いっぱいだったから？」

「違う。もう女はいらねーって事」

その言い方に何か含みがあるような気がして。

もしかして何かあったのかなって思った俺の心をあっさり読まれた。

「女に騙されたんだよ、俺が」

「…はい？」

シンさんには到底似合わない単語が出てきて聞き返す俺に。

あんまり自分の事を離さない人なのに、ほんの少しだけ思い出話をしてくれた。

「付き合うとかタブーな関係の相手。で、それがバレた時、○○○ジョが俺に無理矢理付き合いを強要されてたって

　そう言ったんだよ」

どこか他人事のように言うシンさんに、ちょっと俺が悲しくなったりもしたけど

シンさんは気にした様子もなくて。

「まだそん時の俺ハタチ前のクソガキだぞ？結構堪えるっつーの」

苦く笑うシンさんだけど、もしかしたらまだ好きなのかなーって。

「もう会ったりしてないんすか？」

「会わないよ。会えねぇし」

もう会えなくて、当時タブーな関係って人妻…とかかな。

シンさんに似合う響きだけど、なんか切なく感じるのはなんでだろ。

色々聞きたいけどこれ以上は話してくれないような気がして、俺ももう聞かなかった。

・