[doll]⑥登坂広臣 (ページ35)

今日:2 hit、昨日:8 hit、合計:571,388 hit

広臣side ページ35

※

「A？」

声なんて聞き間違えるはずねーのに、ここで会えるとは思ってなかったから思わず疑問形。

そんな俺を見てにっこり笑うA。

「そうだよ、他に誰か会う人がいるの？」

イジワルな口調。

「お前な、少しは俺に構えよ」

久しぶりのAの腕に手を伸ばし。

掴んで引き寄せる。

すっぽりと俺の腕の中に小さな体を納めて、大きく息を吸い込んだ。

…Aのにおい…。

「どうしたの？」

ゆっくりと俺の背中に手を回すAがクスクス笑ってるから、余計にムカついて。

「どうしたのじゃねーよ…マジふざけんな」

「？」

別に怒ることじゃないし、俺が勝手に限界超えてるだけだし

Aとは全く関係ない俺の個人的な感情なんだけど、同じ気持ちでいて欲しかったっていう俺の我儘なんだよね、これ全部。

「なんだよ一週間って、なげーよ」

「あはは、ごめん」

俺が子供みてーに駄々捏ねるから、Aの掌が俺の背中をポンポンって優しく撫でる。

同じ一週間なのに、俺だけがこんなにA不足で温度差が激しいっつーね。

本当はもっと大人な対応で、カッコイイ俺でいたいのに

実際会って、こうやって抱きしめると無理。

かっこつける事より自分の感情の方が先走る。

こんな時

アオイさんみたいになんでもスマートにこなす男なら、"おかえり"って言うんだろうけど。

・