幻みたいな君は友達 (ページ30)

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「ちゃんと考える」と、そう答えたあと
長尾くんは小さく笑って薄く口を開いた。

長尾「……じゃあ、あの…また後で」

お化け屋敷も屋台も、一緒に行きたかったけど
私はそう言った長尾くんを引き留められなかった。

昨日の今頃は、こんなことになるなんて思ってへんかった。

ただただ長尾くんと楽しく文化祭を回れて、
デートなんちゃうん？なんて浮かれた気持ちで、長尾くんは私のことどう思ってんねやろ、とか
そんなことを考えてて。

いざ、長尾くんがどう思ってるか分かったら
途端に臆病になる私がいた。

こんな、こんなことになるなんて思ってへんかった。

「………嫌、やなぁ」

誰もいない教室で、ポツリ呟く。
嫌やよ、こんな告ってもないのに振られるみたいな。

不意に漏れた声は、思った以上に震えていて
声が震えてるのは自分が泣きそうやからって、そこで初めて気付いてもうて。

なんで、私はこんなに長尾くんのことが好きやのに

“長尾くんと、上手くいくとええな”

——なんで、泣きそうなときに思い浮かぶ顔が、
長尾くんじゃなくて小島なん。

泣きそうで心細いときに、弱ってる私のそばにおってほしいのは長尾くんのはずやのに。

そんな気持ちになって、また目の奥が熱くなった瞬間、
半分開いた窓から、激しいギターの音が聴こえてきた。静まり返っていた教室の空気を切り裂くみたいなその音は、図らずも私の涙を止める。

鼻を啜って、窓のところまで歩いた。
窓のサッシから身を乗り出すと、中庭のステージがよく見える。

「………えっ、」

小島が、小島がいた。

隣のクラスの正門くんがギターを弾いて、後輩の佐野くんがドラムを叩いて、小島がマイクを持って立っていた。

見間違いかと思うぐらい、凛々しくて
いつもの残念イケメンの小島はそこにはいない。

空気が割れるほどの爆音が、校内中に響き渡る。