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小島「——晴れたなぁ」
「晴れたねぇ」
中庭ステージの設営を手伝いながら、昨日の雨が嘘みたいに晴れ渡った空を見上げた。
クラスTシャツを肩までまくってベニヤ板を運ぶ小島の額には、汗の玉が光ってる。
私もステージの端にバミリの養生テープを貼りながら、首元に染みた汗をTシャツの裾で拭った。
小島「……お前なぁ、そういうの、あんましたらあかんで？」
「なに？ そういうのって」
私がそう尋ねると、小島は小さく舌打ちをしてから私の腰のあたりを軽く指差す。
ひらひらと伸びるTシャツの裾は、拭いたばかりの汗で少し濡れていた。
小島「Tシャツで汗拭くのとか、あかんよ」
「あー、うん。はいはい、お行儀悪いもんね。女の子がこんなんしたらあかんもんね」
小島「や、まぁ、うん。そうやねんけど、まぁ…うん」
「なんやの、その歯切れ悪い感じ」
小島「……お行儀悪いっていうか、あれやん。あの……腹とか？ 見えてまうから……やめとき？」
小島はそう言って、束になったダンボールをひょいと持ち上げた。
その大きなダンボールが陰になって、ちょうど小島の顔が見えなくなる。
「えっ、お腹見えてたん？ 嫌やわ〜、記憶消しといてな？」
小島「………消さんよ」
「は？ 覚えてたってしゃあないやん！」
小島「消さへん！絶対！」
小島はそう言い残して「じゃあな！」と半ば早足で駆け出した。
ダンボールを捨てに行くだけやのに、何をそんな急ぐことがあんねん、なんてことを思いながら、私は養生テープを貼り続ける。
ぺっ、ぺっ、とステージの上手端から貼ってきたバミリがステージの真ん中まで辿り着いたとき、反対側から私と同じようにテープを貼っていた人とちょうど鉢合った。
短く切った養生テープを何枚か腕に貼ってストックしてる、同じ高さの目線の可愛い顔。
雨も晴れも似合う、私の好きな人。
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作者名：雨野 | 作成日時：2022年9月24日 18時
