幻みたいな君は友達 (ページ15)

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小島はやっぱり顔を上げないまま、そう答えた。
前髪を括ってるから顔は丸見えのはずなのに、無表情の気持ちが読めない。

クラスの方に顔を出しに行って、ここにはいない長尾くんは、今何をしてるんやろう。

そういえば、長尾くんが長尾くんのクラスメイトと話しているところを、私は見たことがない。

「ふーん、て何やの」

小島「ふーんはふーんやろ。どうせ長尾くんやろうなぁって思ってたし」

「……どうせってなんやねん」

小島「どうせっていうか……ほら、空いてたら一緒に回らんかなって思ってただけやし」

小島はそう言って、切り終えた整理券を輪ゴムで束ねた。

その顔はやっぱり無表情で、気持ちが掴めなくてなんとなく心が騒つく。

「わざわざ一緒に回らんでも、結局委員の仕事で会うやん」

小島「まぁ、せやけど」

「せやけど？」

小島「……せやけど、そういうことちゃうやん。ちゃうねん」

小島はそう言ってから、前髪を括っていたゴムを一気に引き抜いた。

「いてっ」なんて言ってたから、たぶん髪も何本か抜けてる。
アホやなぁって思ったけど、なぜかそれは言葉にはならなかった。

小島「………楽しんでな、文化祭」

急になんやねんって思ったけど、なぜかそれも言葉にならない。

わしゃわしゃと乱れた前髪を直す小島に、私は「うん」と情けない返事をすることしか出来なかった。