14 ページ14
＊＊＊
放課後の見回りが始まって4日目。
文化祭の前日。
校舎の中は、絵の具で塗られたダンボールや色とりどりの風船でいっぱいになっている。
そんなカラフルな校舎とは裏腹に、空は灰色の雲で覆われていた。
秋の雨のせいで熱気のこもった校内は蒸れて、より湿度を増していく。
じっとり湿って汗ばんだ額をシャツの裾で拭う小島は、小さく舌打ちをした。
小島「……暑すぎる、暑すぎて溶けるんちゃうかこれ」
「……暑いなぁ」
小島「なぁ、今日も見回りあるん？ 雨やのに？」
「あるんちゃう？ 雨やけど、みんな残ってるし」
私がそう答えると、小島は大袈裟に「ハァーッ」と溜め息をついた。
視聴覚室では実行委員の何人かが、明日のメインでのステージ発表のために、大判の紙に印刷した整理券をただひたすらハサミで切っている。
校舎内には、校門の飾り付けとかバンド練習とか、そんな華やかな準備をしてる人たちばっかりやろうけど、
そんな華やかな文化祭を支える委員の仕事は案外地味だったりする。
去年もなんやかんや文句を言いながら、こうやってひたすら整理券を切っていた。
小島「Aさぁ」
「うん？」
小島「明日、誰かと回ったりするん？」
小島は手元から視線を上げないまま、そう訊ねた。
ヘアゴムで前髪を一つに括った姿は心底ダサいのに、クラスメイトやら委員の子たちやらに「それ可愛いやん」なんて言われて、その小さいちょんまげをいじられていた。
しかも、嬉しそうに「せやろ〜」と返したりなんかしている。ほんまに、めちゃくちゃダサいのに。
「回るで」
小島「ふーん、長尾くん？」
「………うん」
小島「ふーん」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 160人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨野 | 作成日時：2022年9月24日 18時
