初心な僕らは恋を知らない (ページ41)

今日:7 hit、昨日:3 hit、合計:28,584 hit

4-5 ページ41

＊＊＊

小島「なぁ、今日は何食べたい気分？俺は焼肉」

あれから何日か経った日、あの日みたいに私が会社を出るのを待ち構えていた健ちゃんが、トンと私の肩を叩いた。

謙杜くんより大きくて、骨張ったその手は相変わらず優しくて心地良い。

それでも、私はこの手を掴まなかった。
それを、ちゃんと彼に伝えないといけない。

「……あのね、私」

小島「友達の恋が上手くいったんやもん、それは祝わんとあかんやろ？」

「え…？」

小島「分かるに決まってるやろ、友達やもん。ながちゃんも呼んでさ、お祝いせなあかんよなぁ」

健ちゃんはそう言って、すげない顔でニッコリ笑った。

ごめん、とそう伝えようと思っていたのに、喉に重たい石が詰まったみたいに言葉が出てこない。

小島「ごめんって言うくらいやったら、ありがとうって言うて？そんで、俺のこと親友に格上げしてな。それで許したる」

「……うん、うん。ありがとう」

半分泣きそうな声でそう答えると、健ちゃんは吹き出すみたいに笑って、私の一歩先を歩き出した。

小島「俺、待つの苦手やねん。やから、早く行くで？ながちゃん待っとるから」

Fin.