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長尾「もう一回…Aさんの彼氏になられへんかな」
そう言った長尾くんの声は、凄く凛としていて
優して可愛くて頑張り屋な長尾くんは、知らない間に大人になってるんだと、そんな気持ちになる。
本当は、目の前の横断歩道を走って渡って
長尾くんの華奢な身体を抱き締めてしまいたかったけど、ギリギリのところでそうしちゃいけないと耐える理性が勝った。
長尾くんが開いた私の心の蓋から溢れ出しそうな気持ちを、余すことなく伝える言葉を私は知らない。
恥ずかしくて、でも嬉しくて堪らないこの気持ちを、どうやって君に伝えたらいいのかな。
「………長尾くん、いつからそんな格好良い人になったの？」
長尾「Aさんのおかげやで…？ ほんまは、恥ずかしくて……ちょっと怖い」
長尾くんは、消え入りそうな声でそう言ってから小さく笑った。
点滅してから赤に変わった信号は、臆病な私を嗤うみたいに煌々と光っている。
恥ずかしくて、少し怖い。
私も、ずっとそう思ってた。
だからずっと、申し訳ないって思ってた。
そんな気持ちまで一緒なんだったら、
きっと私たちは、前より上手に恋ができるんじゃないかな。
こうやって少しずつ、
恋を知っていければいいのかな。
それでもいいなら、私は——
「……次に信号が青になったら、長尾くんの……謙杜くんのほう、行ってもいいかな」
街の喧騒に消えそうな声量で放った言葉は、対岸に立つ謙杜くんのところまでちゃんと届いて、
その言葉を受け取った謙杜くんは、人目も憚らずに、めいいっぱい大きく手を振った。
長尾「ええよ、ええに決まってるやん。俺、待つのは得意やねんで？」
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作者名：雨野 | 作成日時：2022年7月31日 22時
