初心な僕らは恋を知らない (ページ21)

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小島『もしもし？ A？』

「どうしたの？」

小島『いま、電話平気？』

「大丈夫だよ、家だし」

小島『そっかー、良かった』

「で、何？どうしたの？」

小島『あー、今さスーパーおんねんけど、俺』

「スーパー？」

小島『うん。あっ、地元のな！大阪の』

「へぇ」

小島『そうそう。そんでな〜、カレー作ろうと思ってんけど、牛肉と豚肉どっちがええと思う？』

「は？それだけ？」

小島『うん、決められへんからAに決めてもらお〜と思って』

電話越しに、スーパーの陽気なBGMと、BGMぐらい気の抜けた健ちゃんの声が聞こえてきた。

本当に、ここのところほぼ毎日、こうやって健ちゃんからしょうもない電話やメッセージが届く。

昨日は「今日、傘持ってった方がいいと思う？」
一昨日は「暑すぎて死にそうやねんけど」。

「健ちゃんさぁ、暇なの？」

小島『暇ちゃうよ！忙しくさせてもらってます〜』

「忙しくしてるわりに、だるい連絡してくんの何？」

小島『だるいって言うな！こっちは真剣やねん！」

そんな、だるい以外の何物でもない連絡だけど
正直、助かってる自分もいて、強く拒めないところもある。

健ちゃんとこうやって意味のない話をしてるときは、長尾くんに対する罪の意識を忘れてしまってるから。

癪だけど、でも健ちゃんがいてくれてよかったと思い始めてる自分もいた。

小島『A？聞いてる？』

「聞いてるよ、どっちでもいいってば」

小島『俺はAの好きなもんが知りたいねん。やからわざわざ電話してんの』

「わざわざって言ってるじゃん」

そう言って笑うと、電話口から健ちゃんの笑い声も聞こえてきた。

癪だけど、本当に癪だけど
健ちゃんがいてくれてよかったって思うよ。