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私が長尾くんと出会ったのは1年半前。
雑誌の編集部に新卒で入社したばかりの頃、その取材先で、私は長尾くんと出会った。
それから何度か取材で会うようになって、
長尾くんに押し切られるような形で連絡先を交換した。
それから取材先以外でも会うようになって、
長尾くんに押し切られるような形で私は長尾くんの恋人になった。
振り返ってみると、我ながら押し流されてばかりだなって思うけど、結局私の方も長尾くんに惹かれてしまっていたから、願ったり叶ったりとしか言い様がない。
夢みたいな、信じ難い日々を過ごしている。
長尾「ご飯は、もう食べた？」
「コンビニおにぎり食べたよ」
長尾「あかんってそんなご飯。ちゃんと食べな」
「でもお腹減ってないし」
長尾「そういう問題ちゃうの」
そんな小言をいなしながら、ナビに目をやると目的地は随分遠くで、
到着予定時刻は、日付が変わる頃を示していた。
「これ、どこ行くの？」
長尾「え〜？内緒」
「……怖いんだけど」
長尾「別に怖いとこは行かんから大丈夫。
途中でさ、サービスエリア寄るから、そこでご飯食べようや」
「高速乗るの！？」
長尾「うん。だって遠出やもん」
そう自慢気に言う長尾くんの視線の先は、青信号。
アクセルを踏み込む足捌きも、随分様になってる。
「長尾くんって、そういうとこあるよね」
長尾「えっ、どういう意味？」
「そのまんまの意味」
別にいいけど。
そういう、行動力が好きだよ。私には無いから。
悔しいから、それは口にしなかったけど
長尾くんは私の気持ちをなんとなく察したようで、変わらず自慢気に「ふふん」と笑った。
長尾「でも、そういう俺でもAさんは許してくれるからな」
「しょうがないからね」
長尾「もう、嘘ばっかり」
軽妙な小言と一緒に、車も軽快に走り続ける。
窓を流れる深夜の東京は、なんだかいつもよりキラキラ輝いて見えた。
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作者名：雨野 | 作成日時：2022年7月31日 22時
