初心な僕らは恋を知らない (ページ37)

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4-1 君に夢中… ページ37

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長尾side

『ほんまにええんやな？』

その言葉と一緒に送られていたのは、ここからほど近い居酒屋のURL。
こじけんとのトークルームの中には、今までしょうもないやり取りしかなかったけど、その中で唯一
真面目な、真剣な言葉が今日初めて届いていた。

Aさんの隣にいるのが、俺やったらいいなって思う。

でももし、それが叶わないなら
こじけんみたいないいヤツが隣におってくれたらええなって思ってる。

ほんまに、そう思ってる。

でもこじけんは、俺が思ってる以上に特上のいいヤツやった。

長尾「……よくない、よくないよ」

取材を終えて、迎えの車に乗り込む直前。
こじけんから届いたメッセージを見て、そう呟いた俺の方を振り向いたのは、みっちーだった。

道枝「なぁ、」

長尾「うん？」

あの後、みっちーとAさんが何を話していたのか、俺は知らないけど
戻ってきたみっちーは、なんだか神妙な顔をしていた。

俺はその時、みっちーに声をかけられないまま、今に至る。

何もないならそれでええけど、ほんまに何もないならあんな顔せんってことも分かる。

道枝「………一生懸命になるのは、カッコ悪いことじゃないと思うで、俺は」

長尾「…………うん」

道枝「頑張って、一生懸命やって、そういうヤツやん、長尾って」

長尾「そう、かな」

道枝「そうやろ……ずっと見てたし」

ともすれば、ちょっと怒ってるみたいな口調でみっちーがそう言った。

ほんまにそうかな、って心の端では思ってたけど、ずっと一緒におるみっちーが言うならそうかもしれないって少し思い始める。

頑張ってもええんかな、
キモいって思われんかな。

俺、Aさんに嫌われたくないんよ。

道枝「Aさんは、長尾のこと…忘れてへんと思う」

忘れたくないし、忘れてほしくない。
Aさんが俺じゃない誰かと幸せになって、
「あんなこともあったなぁ」なんて思い出にしてほしくない。

俺は、たぶんこじけんほどいいヤツじゃないけど
その代わり、誰にも負けないぐらい、Aさんのことが好きやから。

長尾「ごめん、別で帰るってみんなに言うといて」

俺がそう言うと、みっちーは少し驚いたように目を見開いてから、小さく頷いた。