3-14 ページ32
＊＊＊
今日も今日とて、健ちゃんはもりもりご飯を食べて、もりもり話す。
私はそれなりにお酒を飲むけど、健ちゃんはそんなに飲まない。実は飲めないのかもしれない。
そこまで酔ってないのにもりもり喋れるのは、健ちゃんの才能かもしれない。
時々振られる質問になんとなく答えて、そうやって会話が続く。
そうして流れるように2軒目の店にも連れて行かれて、結局いつもの居酒屋にやってきた。
健ちゃんの話を聞きながらたこわさをハイボールで流し込むと、わさびのキツい風味が鼻の奥にツンと染みた。
小島「A、辛いの苦手なん？」
「苦手ってわけじゃないけど……」
小島「でも涙目なってんで」
「変なとこ入っちゃっただけだって」
小島「ふーん？」
健ちゃんはそう言って、意味ありげな視線を私の方に向ける。
その視線に苛立って、健ちゃんをキッと睨みつけると健ちゃんは小さく笑った。
小島「そういや、アレどうなったん？」
「アレって？」
小島「元カレ。こないだ連絡きてたやろ？」
健ちゃんは、すげない口調でそう言ってほんの少しだけ首を傾げた。
覗き込むような眼差しに、思わず息が詰まる。
——だって、元カレが長尾くんだってことは、健ちゃんには言ってない。
「どうって……どうにもなってないよ、別れたし」
小島「Aから振ったんやったっけ？」
「そうだけど……….ねぇ、もうこの話いいって」
小島「でも、Aが落ち込んでるように見えんのはなんでなん？」
「………何が言いたいの？」
小島「いや、振ったんやったら普通スッキリするんちゃうん。別れられてせいせいしたー！って」
そう言う健ちゃんは、ずっと笑顔だったけど
いつになく強い視線に、私の方が戸惑ってしまう。
いろんなことを本当は分かってるんだか、本当に分かってないんだか読めない健ちゃんの表情は、
私から本心を引き出すには充分な材料になっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 246人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「なにわ男子」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨野 | 作成日時：2022年7月31日 22時
