初心な僕らは恋を知らない (ページ25)

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長尾side

無意識に、不意に溢れた言葉に
言ったのは俺やのに、思わず顔が熱くなった。

「……なんで長尾くんが赤くなるの」

長尾「なってへんよ」

「なってるけどなぁ」

向かいに座ってアイスコーヒーを飲むAさんは、楽しそうに微笑む。

その表情が、付き合ってる頃に見た笑顔と同じで、胸がキュッと痛んだ。

「私も、長尾くんのそういうところが好きだったよ」

優しく微笑むAさんの表情が切なくて、でもこの揺らぎを悟られたくなくて、俺も少なくなったカフェラテに口を付けた。

そんな俺を見て、Aさんはまた微笑む。

でも、たぶん
今この瞬間、Aさんは口を滑らせた。

それはAさんにとっては致命的な綻びで、
俺にとっては、またとないビッグニュースなわけで。

だって、Aさんは確かに言っていた。
好きになれなくてごめん、と。

“私も、長尾くんのそういうところが好きだったよ”

これはたぶん、
Aさんが絶対にバラしたらあかんかった本心やって、俺は分かってしまった。