5 ページ5
_
電話口から聴こえてきた長尾の声は、いつもより少し小さく、
でも焦ってるような、切羽詰まってるような、そんな声で。
太陽みたいにニコニコ笑ってる長尾とも、たまに見せる大人っぽい長尾とも違った。
思わず、脳直で「私も会いたい」と答えそうになる。
「あかんて、また明日会えるやん」
長尾『………俺は、いま会いたいんよ。会場出たら、Aが選んだとこでええし、どこでも行く。
なぁ、あかん…？』
「疲れてるやろうし、はよ帰った方がええよ」
長尾『………Aは、俺に会いたくないん？』
そうやって、ずぶ濡れの子犬みたいな声を出す。
会いたいに決まっとるやろ。カッコよかったで、もっと長尾のこと好きになったでって、ってはよ言いたいに決まっとる。
もっと好きになったから、
友達に戻ろうって次会ったら言おうと思ってたことを、たぶん今日は言われへんから、会いたいって言いたくないのに。
言いたくない、のに——
「——会いたいよ、会いたいに決まってるやん」
携帯を握る手が少し震えて、気持ちが指の隙間から零れていく。
電話越しに、長尾が安心したように息をついて笑うのが聞こえた。
長尾『すぐ出るから、Aんちの最寄りの駅でええ？』
「………うん、バレへんようにしてな？」
長尾『分かってる、でも急いで行くから』
長尾の優しい声が聞こえて、電話が切れた。
そういえば、こうなってから屋上以外の場所で二人で会うのは初めてかもしれんって、気付きたくないことに気がついてしまって、
私はかぶりを振って歩き出した。
早足で、ほとんど小走りみたいな足取りで過ぎる街はクリスマスに浮かれていて、
星屑みたいなイルミネーションが、なぜか私の目には滲んで見えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 452人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ももか(プロフ) - 丁寧な言葉選びですっごく好きな作品でした！作者様の描く長尾が最高に好きでした。また素敵な作品楽しみにしてます！更新お疲れ様でした！！ (2022年7月19日 0時) (
レス) @page47 id: c5caa37a1a (このIDを非表示/違反報告)
。 - 星屑に触れたなら 本当にいい作品です。いつも更新ありがとうございました。 (2022年7月18日 17時) (レス) @page47 id: 5aa31afc0d (このIDを非表示/違反報告)
mちゃ(プロフ) - 神作 (2022年7月18日 15時) (レス) id: e046c287bb (このIDを非表示/違反報告)
yukie aaa(プロフ) - 言葉がキレイで、、読んでいて本当に引き込まれます！！ (2022年7月16日 17時) (レス) @page44 id: 5c463d3147 (このIDを非表示/違反報告)
縮人(プロフ) - わ〜丈くん(泣)かっこよすぎて泣けます(泣) (2022年7月13日 0時) (レス) @page39 id: 3fa571b52c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨野 | 作成日時：2022年6月9日 19時
