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ほとんど夢心地で会場を出た瞬間、ポケットの中の携帯が震えた。
届いたのはメールでもLINEでもなく、
「——えっ、」
長尾からの着信だった。
驚きすぎて「なが」まで声に出かけたけど、ヤバいと思って、すぐに手で口を抑えた。
思わず後ろを振り返るけど、そこには私と同じく夢見心地なお客さんの姿しかない。
今コンサート終わったばっかやろ…？
……ほんまに、何考えとるん！
鳴り止まない携帯を片手に、とりあえず人影のないところまで走って息を整える。
一本道を挟んだらファンの人らがたくさんおるんやから、絶対出んほうがええのに。
ていうか、後で「気付かんくて出られへんかった」って言えばええだけやのに。
そんな簡単なことすら思い付かないまま、私は電話のマークをタップした。
長尾『あっ、A！？』
「何？ 今忙しいや——」
長尾『今日来てたやろ。後ろの方、丈くんのうちわ持っておったやろ』
矢継ぎ早に話す長尾は、どこか焦ってるみたいで、その切羽詰まった喋り方に胸が騒つく。
いつもやったら「来てへんよ」って誤魔化せるところを、今日の私は正直な言葉しか口をつかない。
「……来てた、けど」
長尾『やんな！そうやんな！俺、途中で気付いてん！A来とる！って』
「そう、なん？ すごいなぁ、あんな大勢の中から」
長尾『気付くよ！気付くに決まっとるやろ。ずっとAを誘おうか迷っとったし、それに——』
長尾は物凄い勢いでそこまで言って、息継ぎをした。
一瞬生まれた空白に、息が止まりそうになる。
長尾『好きな人やもん。Aがどこにおっても、俺は気付くよ』
電子音に変換された長尾の言葉。
無機質なはずやのに、耳から熱湯を注がれたみたいに顔が熱くなる。
「かっこよかったで」って感想を伝えたいのに、言葉が喉で詰まって出てこない。
数秒続いた静寂のあと、
長尾が小さく息を吸う音が聴こえてきた。
長尾『——なぁ、今から会えへん？』
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ももか(プロフ) - 丁寧な言葉選びですっごく好きな作品でした！作者様の描く長尾が最高に好きでした。また素敵な作品楽しみにしてます！更新お疲れ様でした！！ (2022年7月19日 0時) (
レス) @page47 id: c5caa37a1a (このIDを非表示/違反報告)
。 - 星屑に触れたなら 本当にいい作品です。いつも更新ありがとうございました。 (2022年7月18日 17時) (レス) @page47 id: 5aa31afc0d (このIDを非表示/違反報告)
mちゃ(プロフ) - 神作 (2022年7月18日 15時) (レス) id: e046c287bb (このIDを非表示/違反報告)
yukie aaa(プロフ) - 言葉がキレイで、、読んでいて本当に引き込まれます！！ (2022年7月16日 17時) (レス) @page44 id: 5c463d3147 (このIDを非表示/違反報告)
縮人(プロフ) - わ〜丈くん(泣)かっこよすぎて泣けます(泣) (2022年7月13日 0時) (レス) @page39 id: 3fa571b52c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨野 | 作成日時：2022年6月9日 19時
