32 ページ32
＊＊＊
あれっきり夏休み中に長尾から連絡はなく、
夏期講習に勤しんでる間に夏休みはあっという間に過ぎた。
便りがないのは元気な証拠やって言い聞かせて、日々を過ごして、
でもやっぱりちょっとだけ心配やって、始業式からのホームルームを終えたその足で、私は屋上に向かった。
9月になったとはいえ、屋上はまだ暑くて、終業式の日に飲んだサイダーのことを思い出す。
思い出したけど、センチメンタルに浸る間もなく、私より早く屋上におった先客が、私の方を振り向いた。
夏休み前より少しだけ大人びた表情に、なんだか泣きそうな気持ちになる。
長尾「——A、久しぶり」
「うん、久しぶり」
素っ気なく返して目を逸らしたけど、長尾が小さく笑う声は聞こえてた。
長尾「肌焼けてへんなぁ、全然」
「だって遊んでへんもん」
長尾「ずっと勉強してたん？」
「うん。来年3年やし」
長尾「ふーん、やっぱり真面目やなぁAは」
そう言って髪を掻き上げる長尾は、夏休み前よりも少しだけ背が伸びてる気がする。
ほとんどおんなじくらいの高さやった目線が、ちょっとだけ上になってる、気がした。
会う約束なんかしてへんのに、こうやってまた喋れることが嬉しい。
嬉しいのに、可愛いセリフの一つも思い浮かばん自分が恥ずかしくて言葉に詰まった。
夏休み前の方がもっと、友達らしく喋れたような気がする。
どんなふうに、どんな言葉で話してたか思い出されへんくて、ただただ耳だけが熱くなっていく。
そんなドギマギを悟られたくなくて、私はずっと長尾と目を合わせられない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 357人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mちゃ(プロフ) - 切ないー！2人にサチアレ (2022年6月2日 16時) (
レス) id: e046c287bb (このIDを非表示/違反報告)
雨野(プロフ) - るんさん» コメントありがとうございます！まだまだ始まったばかりですが、お付き合いいただけたら嬉しいです◎ (2022年5月15日 22時) (レス) id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
るん(プロフ) - お話の流れも雰囲気も凄い好きです！応援してます！ (2022年5月15日 1時) (レス) @page13 id: 09d5484fe2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨野 | 作成日時：2022年5月10日 21時
