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「——で？ なんで私は呼び出されたん？」
長尾「そんな怖い顔せんといてよ！ほらこれ、チョコパン食べる？」
「………食べへん」
屋上に長尾と二人。
食べへんって言うたのに、無理やりむぎゅっと口に押し付けられたチョコパンを、しゃーなしやから食べたる。
私は犬かなんかか！
長尾「Aとお喋りしたいって、それだけやのに」
「お喋りならいつも授業中にしとるやん。不服やけど……」
長尾「不服なん？なんだかんだ楽しそうにしてんのに？」
「………長尾のそのおっきい両目は、何のために付いてるん？」
押し付けられたチョコパンを食べながら、長尾の方をムッと睨んだ。
でも、長尾は知らん顔で話し続ける。
長尾「いや、あんな？Aが美術選んだ理由、そんなんないっていつも言うてるけどさ、やっぱそんなことないやろって思て」
またその話。
ほんまに言われへん理由なんやって。言われへん理由やからって突っぱねれば長尾も諦めるんかもしれんけど、その逆もあり得るから言い出されへん。
「余計気になるんやけど！」と目を輝かせる長尾が、簡単に想像つく。
どうしたもんかと口を噤むと、長尾は少し困ったように微笑んでから口を開いた。
長尾「……ほんまに言われへんならええんやけど、Aさ…絵描いてるとき、自分がどんな顔してるか気付いとる？」
「………顔？」
長尾「せや。絵描いてるとき、なんて言うんかな………楽しそうにって言うか、幸せそうに笑ったり、でもたまに泣きそうな顔したりしてんねんで？そんなん、気にせんといてって方が無理なんよ」
長尾がそう言うと、梅雨の合間の湿った風が長尾の前髪を揺らしていった。
聞いたことないような長尾の優しい声が、風と一緒に私の耳に突き刺さる。
「そんな顔、してるん……？」
長尾「せやで。笑ってるときは『絵描くん好きなんやな〜』って思ってたけど、泣きそうな顔してたから………悩みとかなんやったら、誰かに話したら解消されへんかなーとか…思うよ。友達やし」
あぁ、嫌やな。
聞き慣れない優しい声で話す長尾が、見慣れない優しい表情を見せる長尾が嫌や。
そんなふうに優しくされたら、話してもええかなって思ってまう。
——絶対に叶わない恋がつらいって、つらいのにやめられないって、零してしまいたくなる。
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mちゃ(プロフ) - 切ないー！2人にサチアレ (2022年6月2日 16時) (
レス) id: e046c287bb (このIDを非表示/違反報告)
雨野(プロフ) - るんさん» コメントありがとうございます！まだまだ始まったばかりですが、お付き合いいただけたら嬉しいです◎ (2022年5月15日 22時) (レス) id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
るん(プロフ) - お話の流れも雰囲気も凄い好きです！応援してます！ (2022年5月15日 1時) (レス) @page13 id: 09d5484fe2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨野 | 作成日時：2022年5月10日 21時
