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長尾side
「だから、そんな大切なものをくれた謙杜くんに、私も何か返したいって、ずっと思ってたんだ。
それで、私が謙杜くんの気持ちに応えることがそのお返しになるなら、それでもいいかなって思ったの。」
「でも」とAさんは続ける。
自動車も通行人もいない濡れたアスファルトに、オレンジの電飾が反射した。
俺の視界が濡れてるのか、景色が濡れてるのか分からなくて、何度か瞬きをする。
その度に、Aさんの晴れ渡った笑顔が見えた。
「でも……それは違うって、謙杜くんのために私が応えてあげるのは違うなって、気付いて……そう思ったら、私は…謙杜くんに何を返していいのか分からなくなって、それできっと………謙杜くんをたくさん困らせてるんだなって、それも分かって」
長尾「困ってへんよ、少なくともAさんの所為で困ってるわけやない。」
全部、俺が俺の中で堂々巡りになっているだけで、何もAさんの所為じゃない。
そう思って言った言葉に、Aさんは首を振った。「違うの」と俯いて呟く言葉は雨粒みたいに地面に落ちる。
「謙杜くんのため、じゃなくて………私が、私が謙杜くんのことを大切だなって…好きだなって思ってるから………謙杜くんの気持ちに応えるんじゃなくて、また私が謙杜くんからもらっちゃうって———」
震える声で話すAさんに堪らなくなって、腕の中にAさんを閉じ込めた。
俺と同じくらいか少し小さいAさんは、肩を震わせて俺の首元に顔を埋めた。
「ごめんね」と小さく呟く声が聞こえて、そんな言葉は聞きたくないから、俺はもっと強くAさんを抱きしめた。
長尾「返すなんて言わんといてよ。全部あげる、俺の全部。返すなんて寂しいこと言わんで。」
「うん…うん、ごめん」
長尾「謝るのもあかんよ、ありがとうって言うてくださいよ。」
「……ありがとう、私も…謙杜くんのことが、好きだよ。」
耳元でAさんの声が震えた。
でも、それは悲しくて泣いてるからじゃなくて、元気になってAさんが強くなったから泣いてるんやって、ちゃんと解る。
そっとAさんを抱きしめていた腕を離すと、Aさんの目尻にマスカラが溶けていたから、俺は濡れてない右手でその涙を拭った。
長尾「——俺を、Aさんの彼氏にしてくれる？」
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雨野(プロフ) - のあさん» はじめまして！コメントありがとうございます！お楽しみいただけてとても嬉しいです！ゆっくりな更新になりますがお付き合いいただけますと幸いです…！ (2022年4月10日 13時) (
レス) id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
のあ - 完結おめでとうございます！続編もとても楽しみにしています！これからも陰ながら応援しています〜！ (2022年4月9日 23時) (レス) @page50 id: 638164d256 (このIDを非表示/違反報告)
雨野(プロフ) - たにぴこさん» はじめまして！コメントありがとうございます！最高すぎてずっと頭から離れず…書いてしまいました…！お楽しみいただけて嬉しいです！ありがとうございます〜！ (2022年3月31日 10時) (レス) @page27 id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
たにぴこ - 某番組の新曲初披露、最高でしたよね〜！！めっちゃイメージしやすくて妄想捗らせながら読ませてもらいました〜！雨野さんのお話ちゅきちゅき〜♡です！！ (2022年3月31日 3時) (レス) @page27 id: 9b77b91fc8 (このIDを非表示/違反報告)
雨野(プロフ) - おおはちさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみいただけてとても嬉しいです！マイペースな更新になりますが、お付き合いいただけたら嬉しいです…！ (2022年3月28日 13時) (レス) id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨野 | 作成日時：2022年3月27日 0時
