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裏口からこっそり外に出ると、ほんの少しだけ小雨が降っていた。
あれよあれよという間に連絡先を交換していた高橋くんから「10分後にタクシー来るんで 待っといてください」とのメッセージ来ていたから、私は小雨の中、傘を刺さずにタクシーを待つ。
あの日も雨だったな、と不意に思い出した。
謙杜くんに初めて会った日——たぶん、私が初めて会ったと思っている日。
もしあの日、私の帰りがもう少し早かったら。
もしあの日、謙杜くんもお弁当を買おうとしていなかったら。
変な偶然がたくさん重なって、私はこんなところまで来てしまったんだと、不思議な気持ちになる。
綺麗に着飾った謙杜くんの影のある表情が脳裏に焼き付いて離れないのは、きっと今日起こったこと全てが初めての連続で衝撃的だったからだと、そう言い聞かせて、小さく深呼吸をした。
しとしと降り続く雨が、私の結った髪を湿らせていく。
“ああいう謙杜より、可愛い謙杜の方が好きなん？”
西畑くんにそう聞かれて、正直戸惑った。
私の中での謙杜くんは、最初はミステリアスな子だった。優しくて良い子だけど、何を考えてるか分からない、そんな子。
それからアイドルの可愛い謙杜くんを知って、そして今日、影すら操れる謙杜くんを知った。
そのどれもが素敵で、目を奪われて
私はやっぱり、謙杜くんのことが好きだと思った。
こんなこと思うのは烏滸がましいって分かってるけど、そんな謙杜くんのことを誇らしく思ったりもする。
「こんな凄い子がいるんだぞ」と。
この気持ちを謙杜くんに伝えたら、どうなるんだろう。彼は優しいからきっと拒絶したりはしないんだろうけど、それでも、伝えることすら烏滸がましいと思う。
“……どっちも好きですよ。
どっちの謙杜くんも…好きすぎて困るから、困ってるんです。”
自分が放った言葉が、そのまま自分に返ってくる。
持て余す気持ちに、私は困っているんだ。
余りある気持ちは、私には烏滸がましい。
そんなことを考えて鼻の奥がツンと痛んだとき、ちょうどタクシーが目の前に停まった。「迎車」の文字を掲げたタクシーの後部座席のドアが開いて、私はそのタクシーに乗り込む。
ドアが閉まる前の、雨の音が鳴り止む直前
閉まりかけのドアが乱暴に開かれた。
長尾「俺も、乗ります。」
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雨野(プロフ) - のあさん» はじめまして！コメントありがとうございます！お楽しみいただけてとても嬉しいです！ゆっくりな更新になりますがお付き合いいただけますと幸いです…！ (2022年4月10日 13時) (
レス) id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
のあ - 完結おめでとうございます！続編もとても楽しみにしています！これからも陰ながら応援しています〜！ (2022年4月9日 23時) (レス) @page50 id: 638164d256 (このIDを非表示/違反報告)
雨野(プロフ) - たにぴこさん» はじめまして！コメントありがとうございます！最高すぎてずっと頭から離れず…書いてしまいました…！お楽しみいただけて嬉しいです！ありがとうございます〜！ (2022年3月31日 10時) (レス) @page27 id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
たにぴこ - 某番組の新曲初披露、最高でしたよね〜！！めっちゃイメージしやすくて妄想捗らせながら読ませてもらいました〜！雨野さんのお話ちゅきちゅき〜♡です！！ (2022年3月31日 3時) (レス) @page27 id: 9b77b91fc8 (このIDを非表示/違反報告)
雨野(プロフ) - おおはちさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみいただけてとても嬉しいです！マイペースな更新になりますが、お付き合いいただけたら嬉しいです…！ (2022年3月28日 13時) (レス) id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨野 | 作成日時：2022年3月27日 0時
