29 ページ29
高橋「とりあえず、これ付けて。あとは…髪型もちょっと変えた方がええな。」
そう言って高橋くんが私に手渡したのは『PRESS』と書かれた腕章。
よく分からないまま「窓のほう向いとって」と言われた通りにすると、手慣れた様子でわたしの短くも長くもない髪を手櫛で梳かして、手首に付けていたヘアゴムで一つに纏めた。
「えっ、あの、何？」
高橋「バレへんと思うけど、一応な。」
一つに纏められた髪型は後毛の程度まで完璧で、就活のとき以来のポニーテールは私の心を騒つかせる。
「バレへんって…これからどこ行くの…？」
高橋「撮影してんねん、MVの。ちょうど休憩やったから、Aさんの会社近かったよなって思い出してん。そんで言ったらおったから、連れてこかって。」
「って、誰かに頼まれたの？」
高橋「いや？俺がそうしたかったから、そうした。あかん？」
「いや…あかん？って、あかんでしょ…絶対…」
高橋くんは「楽勝やと思うけどなー」と呑気に言う。
取材のフリして忍び込むってこと？そんなこと、ダメに決まってる。
高橋「謙杜もさ、Aさんのことちゃんと分かってないと思うけど、Aさんも謙杜のこともっと知った方がええと思うねん。」
「えっ？」
高橋「かっこいいバージョンの謙杜、見たくない？」
「それは——」
それはもちろん見たいけど、私が見ていいかどうかは話が違う。
謙杜くんには謙杜くんの世界があって、それは私みたいな普通の人と交わるものじゃなくて、
高橋「Aさんは考えすぎやねん。見たいなら見たい。行きたいなら行きたい。それ以外に何が必要なん？」
高橋くんは変わらず素気無い声色でそう言う。
突っぱねるような言い方がむしろ優しくて、私は風通しが良くなった首元に手を添えた。じんわり暖かい体温が私の心を落ち着かせる。
高橋「Aさんは、行きたい？行きたくない？」
「私は、行きたい。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 219人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「なにわ男子」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨野(プロフ) - のあさん» はじめまして！コメントありがとうございます！お楽しみいただけてとても嬉しいです！ゆっくりな更新になりますがお付き合いいただけますと幸いです…！ (2022年4月10日 13時) (
レス) id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
のあ - 完結おめでとうございます！続編もとても楽しみにしています！これからも陰ながら応援しています〜！ (2022年4月9日 23時) (レス) @page50 id: 638164d256 (このIDを非表示/違反報告)
雨野(プロフ) - たにぴこさん» はじめまして！コメントありがとうございます！最高すぎてずっと頭から離れず…書いてしまいました…！お楽しみいただけて嬉しいです！ありがとうございます〜！ (2022年3月31日 10時) (レス) @page27 id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
たにぴこ - 某番組の新曲初披露、最高でしたよね〜！！めっちゃイメージしやすくて妄想捗らせながら読ませてもらいました〜！雨野さんのお話ちゅきちゅき〜♡です！！ (2022年3月31日 3時) (レス) @page27 id: 9b77b91fc8 (このIDを非表示/違反報告)
雨野(プロフ) - おおはちさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみいただけてとても嬉しいです！マイペースな更新になりますが、お付き合いいただけたら嬉しいです…！ (2022年3月28日 13時) (レス) id: 71b7fa2e9d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨野 | 作成日時：2022年3月27日 0時
