『血染めの花』▼笑顔の裏に潜む狂気▲ (ページ19)

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…17 桜ページ19

倒れてしまった杏を慌てて抱き起こした。西崎先生が杏の様子を確かめる。

杏は少し息苦しそうで、体が熱い。

「……軽い脱水症状を引き起こしてるな……
この部屋に閉じこもってから何も口にしていないから無理もないか……せめて水だけでもあれば……」

思い返せばもう何時間も飲み食いしていない。意識してしまうと余計に喉が渇いてしまう。

倒れた杏に気が付き楓と柊、そしていつの間に目を覚ましたのかAもこちらに来る。

「おい……どうしたんだよ！？なんでコイツが倒れて……」

「軽い熱中症のようだけど……」

「杏ちゃん、ずっと休んでなかったし……」

「飲み物……2階だ……」

みんな、疲労の色が見え始めている。しかもこの暑さだ。みんなが熱中症で倒れてしまう前に何とかしないと……！

ペットボトルの水や食料など持ってきているが、Aが言うように荷物は全て2階の寝室においてある。

「私、2階に行って水や食料を取ってきます！
荷物の中には冷却スプレーも持ってきてますし……」

「しかし……名色に出くわすと危険な目に会うかもしれない。お前が眠ったあとも何回か狂ったようにドアを叩いて殺してやると叫んでいたんだ……」

でも、このままだと熱中症でみんな倒れてしまう。菫を説得できれば一番いいのだけど先生は無理だと言った……だから。

「この中で一番足の速い私が荷物を取りに行きます！私は菫より足が速いですから。
菫に見つかっても逃げられる自信があります。だからお願いします！行かせてください！」

必死に西崎先生に頼んだ。

本当は菫の様子も気になる。けれど今は、目の前で苦しんでいる杏を助けたい。

「なら、俺も一緒に……！」

柊が名乗り出てくる。いつも輪に関わろうとしない柊が。

「ありがとう、柊。
でも、何かあった時、1人の方が逃げやすいから。だから私1人で行くよ」

柊まで危険な目に合わせるわけにはいかない。

真剣な目で言うと、柊は黙ってしまった。

「……わかった。ただし5分だ。
5分して戻ってこなかったらあたしも2階に行くからな」

「はい！ 5分もあればじゅうぶんです！」

西崎先生からの許可もおり、私は扉に手をかけ、走る体制を整える。部屋を出ていこうとする私に、みんなが声をかけてきた。

行ってきますと言ったあと、Aが無事に戻ってきて、そう言ったのが聞こえた。

今まで見たことがない表情だった。

私は談話室を出ると全速力で走り出した。