$17 ページ18
side:juri
仕事を終え、いつものように扉を潜ると騒がしいフロアのバーカウンターに黒い影を見つける。
__…誰？
__知らね、
あの日、北斗に連れられ突然目の前に現れた見覚えのない女。
…いや、見覚えはある。
ジェシーが1人で入って来た女の子を助けたと言ったあの時。
視界の端に捕らえた青い目は間違いなくAのだ。
しかし、その後トイレから出てきた子を見たがAの姿はなかった。
そのかわり、今目の前にいる髪も服も真っ黒の彼女が出てきたのは確認した。
そして、きょもが大暴れした時扉越しに俺を見てた子。
3つのシチュエーション全て彼女と同一人物で間違いないだろう。
背格好は全くAと違うのに、なぜか視界の端で追いかけてしまうのはこの場所には異色なまでに飾り気がないからか。
樹「こんばんは、」
A「…こんばんは」
背後から声を掛けると少し驚いたように振り返る。
目が合った彼女の瞳は照明のせいもあるのか、そこらの女と同じ色をしている。
そうだ。Aがこんな所にいるなんて有り得ない。
…唯の俺の勘違いだ。
樹「この間俺に会いに来てくれたよね。知らないとか言ってごめんね、」
あの日、Aが居たような気がした事も、全部俺の勘違い。
だから、次の問いには俺の知らない名前で答えて欲しい。
樹「名前くらい聞けばよかったよね。なんて呼べばいい？」
A「…A」
なんて、浅はかな願いは音を立てて崩れ落ちた。
そんな都合のいい話は許さないと、運命に嘲笑われてるのが聞こえる。
背中を冷や汗が垂れるのを感じる。
君に向けた顔だけ、平然を保つのに必死だった。
樹「Aちゃん、ね。今度は覚えておくよ」
これ以上関わるのは得策ではない。
彼女にとっても、俺にとっても。
そう思い、背を向けた。
A「っ、樹！」
樹「…なに？」
教えたはずのない名前を呼ばれて、確信した。
彼女は、俺を探してここへ来た。
A「…なんでも、ないです」
樹「そ。じゃあね、」
ここで彼女の元へ戻る勇気がこの時の俺にあれば
あんな光景は見ずに済んだのかもしれない。
樹「…ここは君が遊びにくるような場所じゃないよ」
耳に口を寄せ囁く。
…お願いだから、
俺に絶望して。
なんて、皮肉な願いを込めて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 507人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
七星のあ - あおさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます☺︎ご期待に添えるように頑張ります。 (2022年11月29日 23時) (
レス) id: 0371497e5e (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - モチーフになった曲も大好きなので、こういう作品読みたいと思ってました！！見つけられて良かったです☺️☺️楽しみにしてます。 (2022年11月28日 0時) (レス) id: 0c466d2450 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七星のあ | 作成日時：2020年7月10日 8時
