どうせ俺の知らない所で。 ページ13
izw＿side
「川上ぃー」
「はい」
「それと俺どっちが面白い？」
「本に失礼です」
「えっ？？ひどくない！？いいの？俺泣くよ！？泣いちゃうよ？俺結構面倒だよ！？」
「はーい」
えぇ……
仕事も一段落、昼下がりの休憩時間。
いつもなら雑談に付き合ってくれる川上の手元には、桜柄のカバーの本がある。
十中八九、昨日藤崎ちゃんから借りた本なんだろう。
「それさ、結局何て本なの？」
「坂口安吾の青鬼の褌を洗う女、です」
「坂口安吾ぉ？いや、藤崎ちゃん見た目より渋いな」
「見た目で判断しない方がいいですよ」
「うぃーっす」
いや、流石にそれは仕方ないだろう。本から一ミリも目を離さない川上に向かって、内心言い訳をした。
戦後華やいだ文豪だ。坂口安吾や太宰治を代表とする新戯作派は、白樺派だとか新思潮のように学校派閥のものではない。端的に言うと何にも属さなかった者たちの名前なので、定義が曖昧な分クイズには出しにくいから、他の雑学ほど俺も詳しくない。
独特な作風が魅力であり、狂気じみた爆発的性格と風が吹き通っている「がらんどう」のような風格の稀有な作家。
とか何とか、wikiさんありがとう。
何はともあれ、大和撫子の代名詞とすら思える藤崎ちゃんとは、イメージ違いも甚だしい。
人が何を好きになろうと自由だけど、昨日は確かに「こんな恋をしたい」なんて言っていた
川上が今読んでいる本は、俺も読んだことはない。
それでもわかるのは、取り敢えず反道徳・反権威を掲げた作家の作品ということ。
「もしかして藤崎ちゃん、見た目によらずやんちゃだったりして」
「言ったじゃないですか。見た目で判断するなって」
ちょっと不満げな川上の声がすぐに帰ってきた。如何にも、反論めいて。拗ねたような。
なんか、楽しい予感がするね。
「ほほぉ〜う？さては川上、何かあったな？」
「何かって何ですか」
「いやそれを聞きたいんじゃん？？」
素っ気ない、けども。むしろその素っ気なさが雄弁に、藤崎ちゃんのことですって言っている気がした。根掘り葉掘り聴きたいとこだが、何だか拗ねてきたようにも見えるし、一枚だけ写真を撮ってこの話は一旦切ろう。
カシャッ
「……何とってんですか」
「Twitterあげるね」
「はぁ……」
@tax_i
＿＿川上にもとうとう春が来たか……
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きりは(プロフ) - 雰囲気も、言葉選びも、何もかもが美しくて、一番大好きな夢小説です。更新を辞められたのかもしれませんが、凄く幸せな気持ちにさせて頂いたのでコメントさせていただきます。お身体にはお気をつけて。 (2021年8月15日 15時) (
レス) id: 5e4309df87 (このIDを非表示/違反報告)
Loot(プロフ) - 珈琲丸さん» コメントありがとうございます！そう言って頂けると本当に励みになります。是非またいらしてください！ (2020年12月20日 12時) (レス) id: b999c2c44c (このIDを非表示/違反報告)
珈琲丸 - 文章がとてもきれいで素敵です。ご無理のない範囲で頑張ってください。ありきたりですが応援しています。 (2020年12月19日 20時) (レス) id: 13095fee98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Loot | 作成日時：2020年12月13日 0時
