夢主死ネタ短編集＿＿弐【鬼滅の刃】

＿弐話 ページ8

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お館様の言う、真実について心当たりのあるものはいなかった。


ただ一人、麻衣を除いて。


麻衣は考えていた。


ここで正体を表すか、それとも足掻くか。


麻衣(─決めた)


麻衣「仕方、ないよね」


先刻まで黙っていた麻衣が急に話し始めた事に柱は驚いた。


胡蝶「仕方ないとは？」


胡蝶が聞くと麻衣は答えた。


その顔や声にぶりっ子の面はなかった。


麻衣「お館様の言う真実を知ってるの、私だけだし。いつまでもこんな所居られないし」


はぁ、とため息をつくように言う。


いつもとは違う口調、いつもとは違う立ち振舞い。

その何もかもに柱は驚かされた。


だが胡蝶はその中で一人、冷静だった。


先程の麻衣の言葉


“「ただちょっと脅されただけで」”


その事について考えた結果。


胡蝶(まさか…私達は勘違いを…？)


胡蝶の予想はあたっている。


胡蝶「もしかして…麻衣さんは、虐められてなんか、なかった…？」


小声で呟くように言ったためか、聞こえていたのは耳のいい宇髄だけだった。


宇髄は、胡蝶の言葉に、今まで感じていた違和感を付け足した。


ちょこちょことした細かな違和感。


そしてでた結論は─


やはり麻衣は虐められてなんかなかった、と言う事。


宇髄「麻衣、聞きたいことがある」


宇髄や胡蝶が考えている間、他の柱は何もしなかった。


いや、出来なかった。


中には、宇髄や胡蝶のように気づいた者もいたかもしれない。


しかしそれを信じられなかった。


そんなのは嘘だ、認めない、と。


そしてそれは、麻衣のためでも、ましてやAのためでもなかった。


全て、自分のため。


自分が、そんな事をしてしまったと言う多少なりとも感じている、罪悪感から逃げるため。


麻衣「何？」


胡蝶「もしかして、ですけど…」


そこで一旦切り、言葉を考える。


胡蝶、宇髄「麻衣/さんは虐められてなんかなかったのか/んですか？」


麻衣「やっと気づいたの？」


柱(−胡蝶､宇髄､麻衣)は驚きを隠せない。


麻衣は虐められていない？

では、俺/僕/私がしたことは…？


麻衣「お館様、真実と言うのは、この事よね？」


お館様「…そうだね。天元、しのぶ。よく気づいたね
私はね、Aが誤解されたまま忘れ去られていくのが嫌だったんだ
一部の人にしか真実を知ってもらえず、多くの人に誤解で怨まれて忘れて去られるのはあまりに不憫だと思うんだ」


お館様の言う事は至極真っ当だった。

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