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瞬間、いのおちゃんは火が出そうなほど赤くなった顔を、ぼすんと俺の肩にあずけた。
「っひどい、やまちゃん、！」
「なに、なんか怒ってる？」
「意味わかんないくらいかっこいいって言ってんの、！」
「言ってはなかったでしょ。」
なだめるようにぽすぽす頭を撫でてあげると、ぐりぐりともっと強く押しつけられた。
ぎゅうぎゅうと俺の制服を、いのおちゃんの手のひらが握る。
「……すき、やまちゃんだいすき、」
「うん、俺も好きだよ。」
「〜っ、しあわせ！」
「それはそれは。良かったね。」
「……もう、なんでやまちゃんは喜んでないのっ、？」
肩にうずめた顔を少しだけずらして、こちらを見上げるいのおちゃん。
ねぇ、いくら頭の良いいのおちゃんも、こんなに距離が近いって気づかなかったでしょ？
その証拠にほら、唇を奪ったら熟れたように顔がまた赤くなった。
「嬉しいに決まってるよ。」
「っ、無駄にかっこいい声で言わないで……！」
「そんなので真っ赤になってて、これからどうすんの？ いろんなことできないよ？」
「いろんなことってなに！？ 高校生のくせに、……へんたいっ！」
「しょーがないです、高校生だもん。」
あほとかばかとか、ぼすぼすと俺を叩くいのおちゃん。
その純情さからいって、経験はないってことでいいのかな？
うーん……と考えてると不意に、くいっと手が引っ張られた。
ちゅ、と柔らかな体温が唇を塞ぐ。
「……いまぐらい、おれのこと考えてて。」
「なにそれ、妬いてる？ いのおちゃんのことだよ、考えてたの。」
「じゃあ、……っ目の前のおれを、ちゃんと見てて。」
見ててって言われても、そうやって肩に顔うずめられちゃうと見えないんですけど。
そう言ってやろうと思ったけど、恥ずかしそうにいのおちゃんが首筋さえも赤く染めていたからやめてあげた。
変わりに背中をさするだけで満足しよう、今は。
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作者名：鎖空
| 作成日時：2017年7月27日 21時
