LAST. ページ43
side R.Y
柔らかな光が漏れる技術室のドアを開けると、窓の外を眺めていたいのおちゃんがゆっくりと振り返った。
「っあの、お弁当箱!……ある?」
ある?って聞いたけど、それをいのおちゃんが持っているのはわかってた。
「あるよ、……来て。」
手招きして、いのおちゃんは自分が座っている机をとんとんと叩いた。
一緒に座れってこと?
そこに腰かけると、窓からは綺麗な月が見えた。
「……食べる?」
はい、と手渡されたそれは、確かにおれのお弁当だった。ただし、食べてあるのは卵焼き一個ほど。
「食べてないの?」
「……知念くんがくれたんだけど、」
「あれ、もしかしてまずかった?」
「んーん、すごいおいしかった。」
月を見上げたまま、足をぶらぶらさせてこっちを見ようとしないいのおちゃん。
その視線が不意に、床の方へ伏せられた。
「これが、最後かなって。」
「え?」
「山ちゃんのご飯を食べれるのは、これが最後かなって思ったの。もったいなくて食べれなかった。」
情けない、と笑ういのおちゃん。
いつの間にか山ちゃん呼びに戻っていて、なんとなくテンションの上がる俺。
「この前は、ごめんね。」
「ん?」
「おれのわがままで、山ちゃんと距離を置くなんて言って。…………でもおれ、」
「……うん?」
「まだ、山ちゃんのこと好きだなぁ。」
心なしか、いのおちゃんの肩が震えてる。
その体に触れようとすると、やんわりと避けられてしまった。
1226人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鎖空 | 作成日時:2017年7月27日 21時