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「……え、ひかる?」


俺の肩越しに光くんを見たいのおちゃんが、恐る恐るこちらを見上げる。

潤んだ瞳が、濡れた睫毛が、何回が開いて閉じてを繰り返して。



「っな、え、やまちゃん!?」

「……うん、あの、そう。」


ぼぼぼぼっ、といのおちゃんの顔が真っ赤になる。


あの、えと、その。

そんな言葉を何回も繰り返して、いのおちゃんは下を向いた。


「ごめん、光くん。……二人になりたい。」

「っえ、やまちゃ、」

「……いのちゃんは? 二人で大丈夫?」

「……う、ん、だいじょぶ、」


光くんは心配そうな顔をしながらも、技術準備室から出ていった。

残されたいのおちゃんと俺の間には、沈黙。



「……なんか、ごめん。」

「や、えと……やまちゃんは悪くないし…」

「あと、昨日。……ごめんって言って、ごめん。」

「ん、うん……」


そわそわと髪をいじりながら、いのおちゃんは目をそらしている。

またもや広がる沈黙に、俺はもう一度口を開く。



「いのおちゃんが、……いのおちゃんは、俺にとってただの教師なんかじゃないよ。」

「へ、」

「キスも、俺がいのおちゃんにしたくなったからしたんだよ。……あの、だから、いのおちゃんは悲しむ必要とか、ないよ。」

「……ん、やまちゃん、」


頷いてくれたのに、なにもわかってないような顔で、いのおちゃんは笑った。

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作者名:鎖空 | 作成日時:2017年7月27日 21時

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