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「いのちゃん、いる？」
臆することなく……っていうか俺が気まずいだけなんだけど、光くんが堂々とした様子で技術室に入っていく。
「あれ、いないですね？」
「ほんとだ、どこいったんだろ。」
まぁ待ってたら来るでしょ、と飾られている生徒作品を眺めて光くんが言う。
俺はやっぱりいのおちゃんのことが気になって、なんとなく技術準備室のドアノブに手をかけた。
「あ……開いた。」
いつもなら鍵が掛かってて入れないんだけど、開いてるってことはいのおちゃんがいるってこと？
そっとドアノブを捻ると、木くずの柔らかい香りがふわっと押し寄せる。
と、共にいのおちゃんver.のいのおちゃんがこちらに突進してきた。
「ひかるぅ、おそいよ〜……！」
「え、え、はい？」
俺の肩に顔をうずめて、腰に手を回していのおちゃんがぎゅうぎゅう俺を抱き締める。
ってか、俺を光くんだと思ってる？
「……っねえ、おれ、」
それに心なしか肩も震えてるし、あれ、いのおちゃん泣いてる？
「…やまちゃんに、キスされて、なのに謝られちゃったのっ……！」
「……え、え？」
「おれなんかとキスなんてしたくなかったって、やまちゃんはモテるもんって、わかってるのに、っ、」
「……」
「っおれ、かなしくて、さびしくてっ、……おれなんか、ただの教師なのに、」
俺を抱き締めるいのおちゃんの腕の力が、一際強くなる。
それと同時に俺の心拍も速くなって、どんどん顔に熱が溜まる。
「ひかる、っねぇ、これって、」
きぃ、と後ろで技術準備室のドアが開く音が聞こえる。
「おれ、きっと、やまちゃんのこと……」
「いのちゃんと山田くん、なにしてんの？」
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作者名：鎖空
| 作成日時：2017年7月27日 21時
