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「……山田くん、いますか。」
帰りの準備をしてる途中、教室の後ろのドアから聞こえた声に思わず聞こえないフリをしたくなった。
メガネとウィッグをすると雰囲気まで暗くなんのかな、もさお化したいのおちゃん見てるとどんよりする。
「どーすんの涼介、もさお来てるよ。」
「どーするってどーしよ……」
知念が小声で話しかけてくる。
ちなみに裕翔くんは部室に寄るから、校門で待ち合わせになっている。
「山田ー！ 先生呼んでるー！」
「あ、うん、はーい……」
しょーがない、といのおちゃんの方に歩き出した時、小さく舌打ちが聞こえた。
「ったく、涼介はもう……」
「っえ、ちねん、ちょ……！」
ぎゅっと俺の手のひらを握って(しかもなぜか恋人繋ぎ)、知念がいのおちゃんの方へ歩き出す。
「せんせ、これ見えますか？」
ぐいっと持ち上げられたのは俺と知念の繋がれた指。いのおちゃんはこくんと小さく頷いた。
「せんせーの居残りのせいで、僕と涼介ぜんぜんいちゃいちゃできないんです！」
「ふぇ………うん…」
「ってことでこれから僕と涼介、放課後デートなんです。なんか文句ありますか？」
「……な、ない、です…」
「ですよね、じゃあさようなら。」
小さな知念がするりとドアから廊下へ出て、俺もそのまま引っ張られていく。
「知念、知念ってば！」
「なに？」
放課後デートってなんだよ、わざわざ恋人繋ぎしなくても、とか言いたいことは色々あったんだけど。
ぷくりと頬を膨らませて怒る顔が怖いっていうか……可愛くて、言葉が全部どっかいった。
「なんか、ありがとね。」
「どーいたしまして。……まぁ、ゆうてぃもいるし、放課後デートじゃないけどね。」
「ん〜、嘘も方便って言うし！」
「……涼介、よくその言葉使えたね。」
「え、……もしかして俺ばかにされてる？」
恋人繋ぎのまま、廊下を進む俺たち。
後ろから突き刺さるなんだか切なげな視線も、俺は気づいてなかった。
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作者名：鎖空
| 作成日時：2017年7月27日 21時
