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「……いやいや、ありえねーし。」
なんでって、男だからに決まってるだろ。なにを血迷った、俺？
そう、ありえない。
連日の居残りのせいで女の子と遊んでないから。だれか可愛い子でも家に呼んで、今すぐ帰ろう。
「……やまちゃん、…かえっちゃうの？」
たいして物も入ってないスクバを肩にかけると、それが弱い力で後ろに引かれた。
「い、いのおちゃんっ……は、寝てた方がいいよ？」
「……へ、やまちゃん…？」
たいして抵抗力のないいのちゃんをぐっと押すと、簡単にその体はベッドへ沈みこんだ。
……抵抗力無さすぎるが故に、俺を巻き込んで。
「ふふ、やまちゃんちかーい……」
俺が押し倒す形になったにも関わらず、特に焦る様子もなく両手でほっぺを触ってくるんだから風邪って怖い。
「い、のおちゃん、離して。」
「へ、なんで？」
「なんでって、」
貴方のすること全部反則レベルにあざといからです、なんて言えたもんじゃない。
不思議そうに俺を見つめたいのおちゃんはなにを思ったのか、ふわりと俺の腰に腕を回した。
「やーまちゃん、いっしょにねよ。」
「……は？ え、ちょ、待っ、」
さっきまでか弱いと思ってたのに油断した。ぎゅーっと腰に抱きつかれて、あえなくベッドに横になった。
「ちょっといのおちゃ…………もう、」
ぐりぐりと俺の首筋に頭を押し付けたいのおちゃんは、すやすやと寝息を立てていた。
しょうがない、不可抗力だもん。
それにこんなに強く抱きつかれちゃったら離せないし。
いのおちゃんを起こすのも悪いし。
そもそも先に抱きついてきたのはいのおちゃんだし。
思いつくだけの文句を考え終わった頃、ふわふわとやってきた睡魔に俺は身を任せた。
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作者名：鎖空
| 作成日時：2017年7月27日 21時
