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「やまちゃあん、……おみず…」
ベッドに寝かせて、体温計やら冷えピタやらを探していると、ベッドから死にそうな声が聞こえた。
すっかすかの冷蔵庫から慌ててミネラルウォーターを取り出して手渡すと、両手で持ってこくこくと喉を動かす。溢れでる小動物感。
「いのおちゃん、やっぱなにもしない方が可愛いわ。」
「……ん、？ やまちゃん……？」
邪魔そうな毛を髪にかけてあげると、ぱっちり二重の上目遣いで首をかしげるあざとい仕草が返ってきた。
眼鏡をかけてないせいで視界がぼやけるのか、じぃっと音がするくらい見つめられる。
「……ふは、かっこいーね。」
「……………………へ？」
ぷっくりと柔らかそうで誘ってるようにしか見えない唇から発せられた言葉に追い付かない頭。
そのうち、華奢な腕が俺のほっぺに伸ばされた。
「ふふ、ふにふにだぁ。」
「ちょ、いのおちゃん？」
話しかけるも聞こえてる様子はなく。
あれ、
まって、
なんか、触られてるほっぺが熱い。
しかも、脈拍も……いつもより早い？
「へへ、……やまちゃん、ほんとかっこいいなぁ…」
でも、なんだか納得してる自分もいて。
だってこんな可愛いいのおちゃんに「かっこいい」とか言われちゃって、挙げ句にほっぺまで触られちゃって。
女の子にこんなドキドキしたら、恋かなって勘違いしちゃうぐらいの。
と、不意に俺のほっぺにのばされていた腕が、いのおちゃんのお腹にそえられた。ぐー、と可愛らしい音がなる。
「……やまちゃん、おなかすいたぁ…」
「へ、あぁ、うん、……」
頷きながらも動かない俺にいのおちゃんは首をかしげた。
ぱっちりしてるのにとろんとした印象を与える瞳や、その瞳をさらに引き立たせる長い睫毛。
女の子以上に柔らかそうな唇に、熱のせいで淡く色づいた頬。華奢な体つき。
忘れていたわけではないけどいのおちゃんは女の子より遥かにいいスペックなわけで。
あ、れ？
……じゃあなんで、俺はいのおちゃんへのドキドキを、恋だって思わないんだろ？
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作者名：鎖空
| 作成日時：2017年7月27日 21時
