41.ne ページ41
もうこんな時間だ、急いで帰らないと。
結局この件は一度持ち帰ることにさせて頂いて。
女将さんに別れを告げ、足早に自宅へ。
人を呼んでおいて自分が遅刻するなんて失礼だ。
走って走って、やっと家の門が見えてくる。
そこに見慣れない背中を認め、更にスピードを上げた。
その人に追いつくと、できるだけ優しく声をかけてみる。
「こんばんは。」
息が切れているけれど、何とか言葉にはなった。
「ぁ....こんばんは。」
「貴方が噂の刀の名手？」
「えぇと....」
「うん、きっとそうですよね。聞いていた特徴が全て当てはまる。こんな夜遅くにわざわざお越し頂きありがとうございます。僕がこの家の主、川島といいます。どうぞよろしく。」
「よろしく、お願いします....？」
「さぁ、どうぞ中に入ってください。すぐに温かいお茶と茶菓子を用意させます。」
「....」
半ば強引に、その人を屋敷に通す。
客室に案内するとぎこちなく腰を下ろした。
見れば見るほど不思議な人だ。
それなりにちゃんとした身なりをしているのに、その着物は所々解れたり破れたりしている。
刀は古くてボロボロで、だけどそれだけ使い込んできた相棒なんだろうな....なんて。
血の匂いがするのは....これはまぁ、刀を使う仕事をする人にとっては当たり前なのかもしれない。
「....川島、さん。」
どこか脅えたような声で僕の名を呼ぶ。
強い人なんだから、そんなに怖がらなくてもいいだろうに。
「何ですか。茶菓子がお口に合いませんでしたか？」
「いや....あの。川島さんは、俺を抱かないの....？」
「え....っ」
「この時間に呼ばれるってことは....そういうことだと思って。違う....？」
「....ちょっと待って。その話、もっと詳しく聞かせてください。」
刀を使う仕事、身売り....
....嫌な予感がする。
心当たりがあり過ぎる。
まさか、だって....
今自分の目の前にいるこの人は、もしかして....
「....貴方は身売りをしているの？」
「....」
「答えてください。」
「....しています。」
「何の為に？」
「どうしてそんなこと....」
「お兄さんに会いたいから....とか。」
「....！！！」
「....図星、なんですね。」
....こんな馬鹿げた話があってたまるか。
僕はお雪さんを身請けする準備を始めたつもりだった。
部屋を造り、生活用品を揃え....あとは護衛を雇うだけだった。
それなのに、こんなのって....
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 856人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まなお(プロフ) - なぎしゅうさん» ありがとうございます！twitterでフォローリクエストして頂ければ、18歳以上であれば基本的に承認しています。 (2021年2月23日 1時) (
レス) id: aed59bcb78 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしゅう(プロフ) - 初めまして。13作品一気読みしちゃいました。半リアルというかむしろこれがリアルなんじゃないかと思えるくらい、私のイメージ通りのメンバー達で、脳内幸せです。是非、「青い鳥@manao__82」に投稿されてる作品も読みたいのですが、どちらに行けば読めますか？ (2021年2月23日 0時) (レス) id: dee66be56c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まなお
| 作成日時：2020年9月30日 18時
