36.ne ページ36
「貴方は優しすぎます。好きな人を取られて、好きな人に捨てられて....どうしてそんなに笑えるんですか。笑顔を作れるんですか。僕にはわからない....。理解できません。」
言いたくないのに、もっと言い方があるはずなのに。
普段割と何があっても冷静でいられるはずの脳が歪んでいくのがわかる。
理性と感情が噛み合わない。
制御が効かない。
....怖い。
「信じていた二人から裏切られて、それでも自分を殺すんですか？じゃあ一体貴方は誰なんですか。自我はどこにあるんですか。心をどこに捨てたんですか。今の貴方は貴方じゃない、本物のお雪さんを返して....っ」
柄にも無く大きな声。
耳元で、ごめんなさい。
だけど僕は貴方から離れたくないんです。
だって、触れていないと分からなくなってしまう。
本当に貴方が貴方なのか。
今の貴方が、貴方の姿をした人形に思えて仕方ないんです。
僕の好きな人は、もっと素直に笑う人だ。
意外と感情が顔に出やすい人だ。
作った笑顔なんて似合わない。
嘘なんて無縁な人なんだ。
だから、はやく。
返してよ、貴方を。
「....如恵留さん。」
きつく抱きしめすぎたのか、貴方の声は苦しそうだ。
慌てて少し力を弛める。
「例えば俺が、裏切った二人に対して怒りを抱いたとしましょう。例えば、嫉妬を覚えたとしましょう。」
「例、え....？」
貴方は今、怒りも嫉妬も抱いているはずだ。
何を例える必要がある？
「二人に対して負の感情を抱いたとして....それで事態は解決しますか。身請けが流れなかったことになりますか。友人の妹は助かりますか。」
....違う。
そういう話をしているんじゃない。
それは表面上で感情を剥き出しにするか否かの問題であって、心の中では何らかの負が生まれるはずなんだ。
そうじゃないと、貴方が貴方じゃなくなってしまう。
貴方の心が死んでしまう。
「俺は二人のことが好きです。大切で、かけがえのない存在です。だから二人には幸せになって欲しいし、その邪魔をしようだなんて思いません。二人に対して怒りも嫉妬もしません。ただ....」
貴方は一度言葉を切った。
見えないはずの僕の頬に指を這わせて、涙を拭ってくれた。
貴方も泣いているのに。
「辛いとか苦しいとか悲しいとか....自分の中だけで完結する感情はちゃんと持っています。それでも俺が俺じゃないように思えますか。心を捨てたと思われますか。俺以外の誰かに見えますか。」
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まなお(プロフ) - なぎしゅうさん» ありがとうございます！twitterでフォローリクエストして頂ければ、18歳以上であれば基本的に承認しています。 (2021年2月23日 1時) (
レス) id: aed59bcb78 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしゅう(プロフ) - 初めまして。13作品一気読みしちゃいました。半リアルというかむしろこれがリアルなんじゃないかと思えるくらい、私のイメージ通りのメンバー達で、脳内幸せです。是非、「青い鳥@manao__82」に投稿されてる作品も読みたいのですが、どちらに行けば読めますか？ (2021年2月23日 0時) (レス) id: dee66be56c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まなお
| 作成日時：2020年9月30日 18時
