15.nb ページ15
昼下がり。
真昼とも夕方ともつかないこの時間、することも無いので散歩に出た。
まだ日差しがあるから、できるだけ建物の影を歩くようにして。
暑いし日に焼けるし、夏は好きじゃなかった。
だけどそれを話した時、雪が言ったんだ。
『夏にも夏の良いところがあると、俺は思います。いつか真夏の海に行くのが俺の夢なんです。綺麗なんだろうなぁ....！海ってどれくらい広いんだろう。どれくらい青いんだろう。想像できますか？向こう岸の見えない、どこまでも続く水の王様....勿論夏じゃなくても海は存在するけれど、でもやっぱり俺は夏の海に一番惹かれます。』
夏にも夏の良いところ。
雪は人や物にやたらと優しさを振り撒くけれど、まさか概念的な事柄にまで....と、何故かめちゃくちゃ感動させられた。
それから俺も夏の良い部分や好きな部分を探すようになり、ようやく出した答えが『晴れの日は常に散歩日和』という何とも単純なものだった。
商店街を抜けたところで、ふと足を止める。
雪のことを考えていたからか、急にあの店に行く気になった。
まだ夜の時間には早すぎるけれど、たまには普通に団子でも食っていくかな....なんて。
あそこの餡子餅は絶品だし、お茶も悪くない。
女将の話は爆笑してしまうほどつまらないけれど、雪の様子も知りたいし。
思ったより身請けの準備が長引いて、迷惑かけているからな。
ちょっとでも店に貢献してやろうじゃないか。
そんなことを思いながら人混みを分け、店に向かって足を進める。
もう少し、あと数十歩で到着というくらいの距離。
その場所に、見覚えのある後ろ姿を捉えた。
短く結われた後ろ髪に、桃色の着物。
そこから覗く白い腕も、落ち着き無く動き回るその挙動すらも....
....俺は全部、知っている。
その後ろ姿の持ち主を理解した途端、俺の体の一切の機能が停止したように思えた。
思考も、神経も。
町は騒がしいはずなのに、ものすごく遠くの方で聞こえるような感覚。
頭が真っ白になって、だけど目の前は真っ暗闇で。
腕も足も動いてくれない。
今誰かに体を押されたら、何の抵抗もできずに倒れてしまうかもしれない。
....なんてアホらしいことを考えているところに、急な視覚情報が飛び込んできた。
午後の陽に照らされた、陶器を思わせるようなアイツの肌....
頬も腕も、着物の裾から覗く足も。
黙って通り過ぎるつもりでいたのに、頭よりも先に体が動き出していた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 856人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まなお(プロフ) - なぎしゅうさん» ありがとうございます！twitterでフォローリクエストして頂ければ、18歳以上であれば基本的に承認しています。 (2021年2月23日 1時) (
レス) id: aed59bcb78 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしゅう(プロフ) - 初めまして。13作品一気読みしちゃいました。半リアルというかむしろこれがリアルなんじゃないかと思えるくらい、私のイメージ通りのメンバー達で、脳内幸せです。是非、「青い鳥@manao__82」に投稿されてる作品も読みたいのですが、どちらに行けば読めますか？ (2021年2月23日 0時) (レス) id: dee66be56c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まなお
| 作成日時：2020年9月30日 18時
