13.sk ページ13
次の日から、俺は本当に団子屋に立たされることになった。
団子を丸めたり接客をしたり、表で呼び込みもした。
....勿論、すぐに亮ちゃんの提案を飲むことはできなかった。
昔の貧しかった亮ちゃんの姿を色濃く覚えているから、彼に金銭面で頼るのは余計に気が引ける。
だけど俺が昼の仕事を選ぶことで亮ちゃんが喜んでくれるなら....
そう考えると、どうしても気持ちが揺らいでしまって。
それなら結論が出るまで団子屋の仕事をさせてもらえばいい。
時間に余裕があるわけではないけれど、何もしないでいるより少しでも早い段階で働き始めた方がいいという思考に至ったのだ。
夜の仕事に比べて随分と低リスクで健全な労働環境で、しかもお客様との会話は楽しいし世間勉強にもなる。
今まで何の不自由も無い環境に居た俺にとっては愚痴ですら新鮮に感じられる。
呼び込みで表に出れば『可愛いね』『いくつなの？』などと声をかけられ、悪い気はしない。
「辰哉さん、やっと平民の憩いの場にも美人を置くようになったのか。」
「はぁ！？美人ならずっと居るでしょうが！！」
「何処にだよ？」
「ここよ、ここ！！今アンタの目の前に居るじゃないの！！」
「バカ言っちゃいけねぇよ、俺の目の前にいるのは辰哉さんだけじゃねぇか。」
「その辰哉が美人だって言ってんの！！自分で言わせないでよ、悲しくなるじゃない！！」
そんなお客は決まって女将さんに軽口をたたく。
本当に街の人から愛されてるんだな、ちょっと羨ましい。
団子を丸めながらそんな会話を聞いていると、店の奥から照さんが顔を出した。
眉間に皺が寄っている。
「....佐久、今の聞いてたか？」
「え....？ぁ、女将さんとお客様の会話....のことですか？」
「どう思う？」
「どうって....愛されてるぁ、と....」
「....良くない。」
「え？」
「全然良くない。辰哉のことを愛していいのは俺だけのはずなのに....っ」
「....」
....
全然良くない....か。
妙に耳馴染みのあるこの言い回しは、かつての許嫁がよく使っていたもの。
思い出して、ちょっと寂しくなってしまった。
それこそ全然良くない、俺は常に笑っていないと。
だってあの人が言ってくれたんだもん、『佐久の笑顔が一番好き』って。
....あれ、おかしいな。
どうしてまたあの人のことを考えてしまうの？
未だブツブツと文句を言い続ける照さんに相槌を打つことすらできなくなってしまった。
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まなお(プロフ) - なぎしゅうさん» ありがとうございます！twitterでフォローリクエストして頂ければ、18歳以上であれば基本的に承認しています。 (2021年2月23日 1時) (
レス) id: aed59bcb78 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしゅう(プロフ) - 初めまして。13作品一気読みしちゃいました。半リアルというかむしろこれがリアルなんじゃないかと思えるくらい、私のイメージ通りのメンバー達で、脳内幸せです。是非、「青い鳥@manao__82」に投稿されてる作品も読みたいのですが、どちらに行けば読めますか？ (2021年2月23日 0時) (レス) id: dee66be56c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まなお
| 作成日時：2020年9月30日 18時
