1.ab ページ1
ここでの暮らしは案外悪くない。
毎晩色んな客に媚びを売り、美しく鳴くだけの仕事。
食べるものも寝床もちゃんとあるし、欲だって毎日解消される。
人間の三大欲求が、当たり前のように満たされる生活。
小さい頃の俺に教えてやりたいくらい。
綺麗な着物を与えられて、たくさんの人に愛されるんだよって。
空腹に泣くことも冷えきったボロ布に包まって眠ることも無い、毎日が幸せだよって。
あの日....
そう、あんなに貧しかった我が家に盗賊が押し入ったあの冬の日。
当然盗まれるようなものなんて何も無かったけれど。
僅かな食料や母の着物、それに家まで取られてしまった。
小さくて寒い、だけど家族四人の思い出が詰まった何よりも温かい家だったのに。
俺達家族は命からがら逃げ切ったものの、気付いたらバラバラになってしまっていた。
いや、俺だけがはぐれたのかな。
今となってはもうわからない。
だけど、幸いなことに俺は拾われた。
家族と同じくらい温かいその手が差し伸べられたのは、本当に奇跡としか言いようが無いと思う。
降り続ける雪に埋もれて動けなくなった幼い俺を、優しく抱いて連れ帰ってくれたらしい。
その命の恩人の元で働けるのは俺にとっても嬉しいし、これが恩返しになるのならこの上なく光栄なことだ。
普通の家の子のように育てられ、勉強もさせてもらって。
学校には通えなかったけれど、たまに分厚い本を貰った。
俺はそれらを夢中で読んで、すぐにそのほとんどの内容を頭に入れてしまった。
たくさん褒められた。
恩人の笑顔が見られて、俺も嬉しくなった。
それから少し経って、俺が十歳になると恩人の仕事について行くようになった。
強制されたわけじゃない、俺がそう望んだ。
そして作法やら何やらを、少し年上のお姉様方に教えて頂いて。
ついに十三の誕生日、俺は初めて男の人に身体を開いた。
優しい、紳士的な方だった。
今思えばそれは恩人やお姉様方による俺への配慮だったのかもしれないけれど、これは俺の勝手な憶測に過ぎない。
「雪、今日早めに入れる？」
「はいよ。今日は何方がいらっしゃるの？」
「喜びな、渡辺さんだよ。」
あんな出会い方だったから、俺の源氏名は雪。
浅黒い色の肌をしているのに、雪。
この人のネームセンスを心底疑っている。
「女将こそ、この間色男に興奮して照さんに怒られてたくせに。」
「しょうがないでしょ、俺だって乙女なのよ。」
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まなお(プロフ) - なぎしゅうさん» ありがとうございます！twitterでフォローリクエストして頂ければ、18歳以上であれば基本的に承認しています。 (2021年2月23日 1時) (
レス) id: aed59bcb78 (このIDを非表示/違反報告)
なぎしゅう(プロフ) - 初めまして。13作品一気読みしちゃいました。半リアルというかむしろこれがリアルなんじゃないかと思えるくらい、私のイメージ通りのメンバー達で、脳内幸せです。是非、「青い鳥@manao__82」に投稿されてる作品も読みたいのですが、どちらに行けば読めますか？ (2021年2月23日 0時) (レス) id: dee66be56c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まなお
| 作成日時：2020年9月30日 18時
