第57話 ページ8
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「ヴォルフ、知ってんのか？」
「興味があってな。昔、調べていた時期があったんじゃ。可能性は充分ある。A。お前さん、どこかで妙な柄の果物を食わなかったか？」
「……あ、」
鮮やかな黄色がちかりとAの脳裏を過ぎった。
流れ着いた砂浜で拾い食いした、嘔吐くほどの強烈な味をした果実。こんな食べ物があるのかと二重の意味で驚かされた渦巻き模様の物体。
特に物珍しいものであったが故に鮮明に焼き付いている。
思い当たる節があるかのようなAの反応に、ヴォルフは更に続ける。
「悪魔の実というのはな、1口食えば驚異的な能力を得ることができる奇怪な果実のことじゃ。その代わり自然の母である海に嫌われて、その体は一生カナヅチになってしまう」
なるほど、風呂で溺れかけたことにも説明がつく、とヴォルフは顎に片手を当てる。
一方でカナヅチという単語に首を傾げるAには「泳げくなっちゃったってことだよ！」とベポが慌てたように補足を入れた。
一時しのぎで空腹を満たす為に食したものが、まさか生涯を揺るがすほどの欠陥を抱えたものであったとは。
ようやく理解が追いついたAも少なからず動揺を見せた。
「だとしたらアレ、どういう能力なんだ…？」
「ピカピカってしてて、キラキラってしてて…」
もう一度見ようにも、あんな殺傷能力の高そうな力を慣れていないAに無闇に振るわせるわけにもいかない。
あの青い光を上手く言い表せる言葉が見つからず、的確な擬音語だけが増えていく。
「────星」
曖昧模糊なペンギンとシャチの会話を切り開いたのは、Aの落ち着き払った声だった。
「あれは、たぶん星」
ほとんど直感とはいえ、その単語はこれ以上ないほどよく馴染んだ。
唐突に生まれ出でた不和、あるいはチグハグな万能感。
そこへ久しく見ていない星月夜の夢が、何度も目にしたあの無数の煌めきが、陶酔にも似た感覚を制する。
悪魔の名を冠する果実の一種にしては随分ロマンチックにも思えるその力は、奇しくも夢の中で辰星を観測する少女に与えられた。
そんな思いもよらないギフトは味覚という一度きりの反発を経て、既に彼女の肉体と深く結び付いている。
故にAには、あの青い光の正体への妙な確信があった。
「それなら図鑑にも載っておった。
「星人間？」
「端的に言えば星を操ることができるらしいが…」
「なんか小難しーな…」
いまいちピンと来ない能力の概要にペンギンは思わず唸った。
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夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。これからも作者様のペースで更新頑張ってください！ (3月20日 19時) (
レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あーねさん» ありがとうございます！そう言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しいです…！更新頑張らせていただきますッ！ (11月9日 0時) (レス) id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 一気読みしてしまいました…！どこか儚くて美しい表現力に痺れました！マイペースに更新頑張ってください…！ (11月8日 18時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あさん» 閲覧していただきありがとうございます！頑張らせていただきますー！ (10月20日 6時) (レス) @page9 id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あ - いつも読ませていただいてます！これからもお願いします！ (10月15日 21時) (レス) @page8 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いの | 作成日時：2023年9月7日 0時
