第55話 ページ6
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夜の帳が下りた帰路をライトで照らしながら、バギーはエンジン音を響かせ雪上を駆け抜けていく。
波瀾万丈な1日にすっかり疲弊しきった顔をしていた一行であったが、その内心はプレジャータウンに訪れた時よりも晴れやかなものだった。
各々が町で得たものについて語らっていれば、他でもない功労者であるヴォルフがふいに口を開いた。
「…A、礼を言うぞ。こんな老いぼれの為に体を張って」
小屋への道から目を逸らさずにしんみりとそう言ったかと思えば、いつかのように次の瞬間には頑固な老人としての質が顔を覗かせた。
「だがな、無茶をするな！下手をすればお前さんが死んでいたかもしれんのじゃぞ！」
「ガラクタ屋も言えた義理じゃねェけどな」
「ぐっ」
「でも同感だ」
反論の余地など微塵もないローの正論に呻くヴォルフ。
じとりと半目がちだった蜂蜜色の瞳が、今度は冬空の冴えた月を彷彿とさせる鋭さを宿し、その対象をAへと変えた。
「何をやるか選ぶ権利はあるけどな、いきなり1人で突っ込むな」
彼の威圧的な立ち振る舞いも見慣れたものだ。
だからその無愛想な言葉遣いの奥にある真意を見抜くことなど造作もない。
だが今回ばかりは妙な突っかかりがあった。
それはA自身、未だに何故そうしたのか理解が追いついていなくとも、ヴォルフを救ったという事実を確固たるものとして認識していたからだ。
────図らずも彼にとって大きな存在は命の危機から救われたはずだ。なのに何故、彼は納得できないと言いたげな顔をするのか
ゆるゆると頭を回して辿り着いた答えは、とにかく彼は怒っている、という水面をなぞっただけの浅い思考だった。
故に言葉はまとまらず、会話は生まれない。
そんな進展の兆しを見せないやり取りを見兼ねて、ベポがそっと助け舟を出した。
「あのね、A。ローさんもおれ達も心配するから、あんまり怪我とかしてほしくないんだよ」
「おいベポ！！」
「え！そういうことじゃないの！？すんませんッ！」
鬼気迫るような形相に思わず肩を跳ねさせるベポ。
ローの頬はほんのりと紅潮しており、その変様は色白な分だけ余計に際立っている。
そんな彼をにやけ顔で眺めるヴォルフやペンギン、シャチの3人に、ローは更に声を荒らげて目を吊り上げた。
ベポと2人取り残された空気感の中で、Aは不思議そうに尋ねた。
「…しんぱい？」
「うん。友達が傷つくのは誰だって悲しいから…」
「…ともだち、」
「そうだよ！おれ達のこと！」
だから心配して当然でしょ、とベポは目を細めてそう返した。
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夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。これからも作者様のペースで更新頑張ってください！ (3月20日 19時) (
レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あーねさん» ありがとうございます！そう言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しいです…！更新頑張らせていただきますッ！ (11月9日 0時) (レス) id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 一気読みしてしまいました…！どこか儚くて美しい表現力に痺れました！マイペースに更新頑張ってください…！ (11月8日 18時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あさん» 閲覧していただきありがとうございます！頑張らせていただきますー！ (10月20日 6時) (レス) @page9 id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あ - いつも読ませていただいてます！これからもお願いします！ (10月15日 21時) (レス) @page8 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いの | 作成日時：2023年9月7日 0時
