第52話 ページ3
.
「A！！無事か！？怪我はないか！？」
男がしっかり気絶しているのを確認したヴォルフは、ローに抱きとめられたAの元に駆け寄った。
掴んだ両肩を前後に激しく揺らせば、連動して首も大きく振り回される。
らしくもないあまりの焦燥っぷりからの挙動に、Aは舌を噛まないようにこくこくと首を縦に振ることしかできない。
どうやら何の外傷もないらしい彼の様子に、腹の底からホッとした溜息のようなものが漏れた。
「落ち着けガラクタ屋！怪我はねェ！寧ろあんたのそれで首が折れる！」
「はっ！すまんつい！」
「ていうか何だあれ、あの青いビームみたいなやつ！Aいつからあんな能力持ってたんだよ！？」
「……しらない…」
ローの制止に続き、今しがた見たものの正体を上擦った声で問いただすベポ。
当の本人であるAにも何が何やら分からずじまいで、いつにも増して声に覇気がない。
突発的な謎の現象に混迷を極める中、そこへ更に騒がしい足音が加わった。
「ヴォルフ、何があった！？銃声が聞こえたと通報を受けたんだが！？」
額に汗を滲ませ、大慌てで駆けつけたラッドは、現場の状況に目を丸くした。
頭に大きなたんこぶを拵えて気絶している家主の男、散乱している何かの破片、大砲でも撃ち込まれたかのように抉られた豪邸の壁。
そして何やら大騒ぎしている今朝ぶりの顔ぶれ。
何が原因でこのような混乱に陥っているのか、明確な情報が1ミリたりとも窺い知ることができない。
「おう、ラッド！この男と、それから家の中にいるだろう妻。その2人は武器の密輸や、町での強盗を子供達にやらせていた！すぐに部屋を調べてくれ！」
「……っ！前々から悪い噂の絶えない家だったが……しかし証拠もなしに踏み込むわけには…」
「ふん！証拠なら十分揃っておるわい」
事件内容を把握しているヴォルフの頼みに、ラッドは驚いた様子を見せた後、思うように進展しない捜査への口惜しさを滲ませた。
彼等駐在はこの町で発生する事件において、以前よりこの屋敷、延いては家主の男に嫌疑の目を向けていたのだ。
しかしその手口は狡猾そのものであり、幾度とない捜査の末にも決定的な尻尾を掴むには至らず、長らく逮捕に踏み切れない状況にあった。
それ故ヴォルフによって突き出された証拠とやらに、ラッドは瞠目せざるを得なかった。
その精密性とこれまでの捜査結果との合致性、そして公に秩序を守るという立場が邪魔をして、容易には踏み込めなかった深部の情報の数々。
数枚の書類に目を通しただけでも、裏付けさえ完璧に取れている彼独自の調査結果に、流石に度肝を抜かされた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 254人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ONEPIECE」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。これからも作者様のペースで更新頑張ってください！ (3月20日 19時) (
レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あーねさん» ありがとうございます！そう言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しいです…！更新頑張らせていただきますッ！ (11月9日 0時) (レス) id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 一気読みしてしまいました…！どこか儚くて美しい表現力に痺れました！マイペースに更新頑張ってください…！ (11月8日 18時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あさん» 閲覧していただきありがとうございます！頑張らせていただきますー！ (10月20日 6時) (レス) @page9 id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あ - いつも読ませていただいてます！これからもお願いします！ (10月15日 21時) (レス) @page8 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いの | 作成日時：2023年9月7日 0時
