第67話 ページ18
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しゃがみこんで整えていた手元の花から徐々に視線を上げていく。
黒い靴に黒いズボン、黒いセーター、黒縁眼鏡、そして黒髪黒目が順々に目に留まった。
意識的なのか否か、身体的な特徴に加えて黒で統一された服装に身を包んだ彼は、この花園の中にポツリと落ちた日陰のよう。
第一印象はいつも真っ黒。
他に目を引くような特徴があるとすれば、人よりもやや整った風貌をしていることくらいか。それでも彼はどこにでもいるような普通の人間だった。
町の人々と同じく、ただただ善良な一般人であるこの青年こそ、ウルその人だ。
笑うと周囲に花が飛ぶような雰囲気がクロエと似通っていて、2人揃って客や近所からも評判がいい。
彼もまた、この花屋を切り盛りしている店主だった。
表側の白い扉のドアベルが鳴った音は聞こえなかった為、恐らく裏口から帰宅したのだろう。
「…かえってきてたんですね」
「ついさっきね。はいコレ、お土産のタルトタタン。もうすぐお昼休憩だろうからその時にでも食べてね」
そう言って差し出された白いケースから漂う甘やかな匂いにAは目を輝かせた。
ウルはその愛らしい反応に微笑み、それから堪えていたものが滲み出てしまったかのように眉尻を下げた。
彼は1ヶ月に1度、とある探し物の為に不定期に
疲労の色も含んだその浮かない表情からして、今回もまた目的を達成できずに終わったのだろう。
「…きょうは休んだほうが、」
「……うん、そうさせてもらうよ。さすがに疲れた…」
「…おみやげ、ありがとうございます」
「いいよ、お礼なんて。おれがいない間、店やクロエのことを任せっきりにしていたからね」
「いや…」
世話になっているのはどう考えてもこちらの方だ。
素人も素人。しかも知人が連れていたとはいえ、やって来たのは素性の知らぬ子供だ。2人で残していくことに不安がないという方がおかしいだろう。
それは一重にクロエの身を案じてのことだ。
今回のように比較的長期に渡り
そうまでしてウルが島外をあちこち回っているのは、彼の目的がスワロー島内ではとても解決できるようなことではないからだ。
「それはそうと、本当に驚いたよ。クロエが急に紹介してきた時はどんな子かと思ったけど……仕事覚えは早いし、手先が器用なんだね」
「…でも家事とか、あんまりうまくできないです」
休息を促したつもりが、これは否定せねばという話題が出たことでつい会話が続いてしまった。
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夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。これからも作者様のペースで更新頑張ってください！ (3月20日 19時) (
レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あーねさん» ありがとうございます！そう言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しいです…！更新頑張らせていただきますッ！ (11月9日 0時) (レス) id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 一気読みしてしまいました…！どこか儚くて美しい表現力に痺れました！マイペースに更新頑張ってください…！ (11月8日 18時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あさん» 閲覧していただきありがとうございます！頑張らせていただきますー！ (10月20日 6時) (レス) @page9 id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あ - いつも読ませていただいてます！これからもお願いします！ (10月15日 21時) (レス) @page8 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いの | 作成日時：2023年9月7日 0時
