第66話 ページ17
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白一色から一変。視界に無数の色が咲き、ドアベルの軽やかな音と花の芳香がAを出迎えた。
「…おはようございます」
「あ、おはようAちゃん！」
鮮やかな花々が連なる中に、一際美しい笑顔がパッと咲く。
トレードマークのような臙脂色のブランケットは、今日もクロエの温もりを守るようにして肩にかけられていた。
2人でてきぱきと普段通りに準備を終えれば、いよいよ開店である。
朝は疎らであった客足は昼頃になると比較的出入りも増え、少しばかり慌ただしくなっていった。
「あら、新入りちゃんかしら？」
「まあ綺麗な子！こんな歳から働いているなんて偉いわねぇ。飴ちゃん食べる？」
「思い出したわ！貴方、前にヴォルフさんが連れていた子じゃなくって？」
「クロエちゃんもウル君も人手が増えて大助かりなんじゃない？」
「あ、そうだクロエちゃん！これ良かったら貰ってくれるかしら？ちょっと張り切って作り過ぎちゃって…」
婦人達の一方的で奔放な会話に口を挟む余地などない。
Aも思わず押し黙ってしまうほどの気圧されっぷりである。
婦人達はひとしきり世間話に花を咲かせると、ようやく気が済んだのか部屋の装飾用にと花をいくつか購入した後、来た時と同じく騒がしいまま退店していった。
まるで嵐が過ぎ去ったかのような店内は、外の町並みの喧騒が薄らと聞こえるだけとなった。
「おば様達、今日も元気だったわねぇ…」
「…知りあいなんですか？」
「ええ、そうなの。まあこの町の人全員顔見知りみたいなところはあるけれど……皆、私が小さい時から面倒を見てくれてる人達なのよ」
しんみりと、クロエは微笑を浮かべて遠くを見やる。
遠く───売り物の花が飾られた店の壁ではなく、目の前に広がる虚空。
ものの数秒足らずであった翡翠の瞳の哀歓は、彼女が両手をパンッと打ち鳴らしたことで終わりを告げた。
「さ、お仕事に戻りましょ！Aちゃんはそれが終わったらこっちのお花も切り戻ししておいてくれるかな？私は水揚げ作業終わらせちゃうわ！」
「……はい」
そこにいたのは、もういつもの朗らかな雰囲気を纏う彼女だった。
裏方へ引っ込んでいく姿を見送り、手に持った花鋏で不要な葉や茎を取り除いていく。それが終われば次の商品へ。
せっせと動き回り、振り分けられた仕事をこなしていくA。
その手捌きは初めこそ拙かったものの、今やある程度の業務であれば任せられるほどになっていた。
それは総意である。クロエと、彼の。
「────結構慣れてきたね。安心したよ」
不意に背後から話しかけられて、作業の手がぴたりと止まった。
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夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。これからも作者様のペースで更新頑張ってください！ (3月20日 19時) (
レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あーねさん» ありがとうございます！そう言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しいです…！更新頑張らせていただきますッ！ (11月9日 0時) (レス) id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 一気読みしてしまいました…！どこか儚くて美しい表現力に痺れました！マイペースに更新頑張ってください…！ (11月8日 18時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あさん» 閲覧していただきありがとうございます！頑張らせていただきますー！ (10月20日 6時) (レス) @page9 id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あ - いつも読ませていただいてます！これからもお願いします！ (10月15日 21時) (レス) @page8 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いの | 作成日時：2023年9月7日 0時
