第65話【不滅のダーズンローズ】 ページ16
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それなりに忙しい1日は、ヴォルフが発明した電動自転車でプレジャータウンまで通うことから始まる。
小屋やその近辺という小規模な範囲から拡大した世界は思っていたより大きくて、学ぶべきことの為に多くの時間を要した。
だから彼等が共に過ごす時間が減るというのは自然なことだった。
初めこそ仕事に慣れることに精一杯で気にする余裕もなかったのだが、偶然にも帰宅時間が揃い、全員で久々に食卓を囲んだことに気が付いたのがきっかけだ。
その日の就寝前、ベポが少し寂しそうに俯いているのを見て、ペンギンとシャチは優しく頭を撫でてやった。
「そう落ち込むなよ、ベポ。どんだけバラバラの場所にいても帰る場所は同じなんだから」
「あー、じゃあ飯は絶対に一緒に食うことにすんのはどうだ？」
「難しくねェかそれ…」
「そこは何とか頑張って揃える！ぶっちゃけおれもちょっと寂しかった！Aもそう思わねェ？」
ペンギンから唐突に話を振られて頭を捻るA。
しばらく無言で考え込む様子に、彼はやや不安そうに眉を下げる。
「あれ、そうでもない感じ…？」
「……何か足りないかんじはしてた、けど…」
言うまでもなく町の人間達は優しい。仕事をするというのも決して悪いものではない───と思う。
けれど、何というか肌寒い。
スワロー島の冬島としての環境のせいではない。
そこにあるべきものがないことへの違和感。言うなれば、欠落感だ。
しかもその感覚は仕事をしている間だけにやって来るものときた。小屋でひとたび彼等と顔を合わせれば、たちまち嘘のように治ってしまうのだから奇妙なことこの上ない。
物足りなさのようなそれが"寂しさ"であり、常に共にいた彼等の存在が欠けたことが理由であるのなら、その感覚にも辻褄が合う。
「寂しいを理屈っぽく言ったら多分そうなんのかな…？」
「そんでベポが一番重症っぽい」
「重症ですんません…」
「謝んなって。なあベポ、どうだ？結構良い提案だろ？」
「……うん、そうだね！」
Aはまた1つ納得した。
そして溜息はあれど、誰1人とて異論はなかった。
翌朝ヴォルフに伝えた時には彼も同じような反応で、翌日から生活の決まり事として追加された。
朝食を一緒に食べて、仕事に出かけて、その日の出来事を語らいながら揃って夕食を取り、床に就く。
その中でも勉強や、約束通り鍛錬の時間はきっちり確保した。
1日、1日と、そんな忙しなさにも慣れてゆく。
そして今日もまた繰り返す。
曲がり角で4人と別れたAは、すっかり馴染みのものとなった町の雪景色を横目に、勤務先である花屋の白い扉を押し開いた。
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夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。これからも作者様のペースで更新頑張ってください！ (3月20日 19時) (
レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あーねさん» ありがとうございます！そう言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しいです…！更新頑張らせていただきますッ！ (11月9日 0時) (レス) id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 一気読みしてしまいました…！どこか儚くて美しい表現力に痺れました！マイペースに更新頑張ってください…！ (11月8日 18時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あさん» 閲覧していただきありがとうございます！頑張らせていただきますー！ (10月20日 6時) (レス) @page9 id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あ - いつも読ませていただいてます！これからもお願いします！ (10月15日 21時) (レス) @page8 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いの | 作成日時：2023年9月7日 0時
