第62話 ページ13
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その常人の枠組みに自分は含まれていない、とAは冷静に分析した。
彼等の慟哭の意味を理解したところで、頭も心も冷めた鉄のようで、冷徹を体現したかのような性質は人間のそれとは明らかにかけ離れている。
だが同時に、それでは駄目だと修正しようとする意思も確かに存在していた。
ヴォルフが言っていた通り、今日は多くのものを見た。
明日からはプレジャータウンでの仕事も始まり、その機会はもっと増えていくのだろう。
その度に自覚していく。
生きとし生けるものが見せる煌めき。燃え上がる命の灯り。
ああいう小さくて綺麗なものを自分は幾度となく掻き消してきたのだと。
町で感じた痛みといい、世界を学ぶという行為の中には、己の負の面と向き合うことも含まれている。
そしてそれは後悔というよりも、手にかけたものの"重さ"を知る為の積み重ねなのだ。
「……おれは、」
ローは再び逡巡する。
目の前にいる少女の行い、それに追いつけない彼女自身の心。表情に現れずとも混乱しているのは明白で、それでも少しずつ思考の棚を整理していく。
Aはその過程を放棄しなかった。拙くとも、自分の行為の理由に答えを導き出した。
糸の切れた人形のようであった、Aがだ。
ならばこちらも解を示さなければ、示しがつかないだろう。
「もう死に逃げなんてさせてやるつもりはねェ」
駐在の連絡で上陸した海軍によって連行されていった叔父夫婦。
刑期がどれほどかは分からないが、プライドだけは一級品である彼等があれほどの醜態を晒しておいて、のこのことプレジャータウンに戻って来られるとは思えない。
それでいい。
生きている限り、見下してきた種類の人間に一泡吹かされた挙句、財産を全てを失ったという屈辱的な現実から逃れることはできないのだ。
ああいう手合いにとって、その罰は何よりも効く。
尤もペンギンやシャチが彼等の行く末を気にかけていない時点で、その生き死には最早知ったことではないのだが。
「ガラクタ屋がぶん殴ったおかげで少しは清々したけどな、おれはまだ腹が立ってんだ。おれの子分を好き勝手しておいて、何の
殺しという行為における正当性の定義なんて曖昧だ。
その残虐性を糾弾されるか、あるいは功績と見なされ英雄視されるか、はては境遇に同情されるか。
つまるところ命とは恐ろしく軽いものであり、人間の価値観なんてケースバイケースもいいところだ。
秩序とは互いの善性の上に成立しているだけの砂城のことであり、いつ崩れ落ちるかなんて分かったものじゃない。
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夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。これからも作者様のペースで更新頑張ってください！ (3月20日 19時) (
レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あーねさん» ありがとうございます！そう言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しいです…！更新頑張らせていただきますッ！ (11月9日 0時) (レス) id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 一気読みしてしまいました…！どこか儚くて美しい表現力に痺れました！マイペースに更新頑張ってください…！ (11月8日 18時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あさん» 閲覧していただきありがとうございます！頑張らせていただきますー！ (10月20日 6時) (レス) @page9 id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あ - いつも読ませていただいてます！これからもお願いします！ (10月15日 21時) (レス) @page8 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いの | 作成日時：2023年9月7日 0時
