第61話 ページ12
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そう、異分子。
一連の行為の根底にある生存欲求に揺らぎはない。
そもそもの前提が異なるが故に生まれた認識の齟齬は、二つに一つしかなかった選択が、自由意思のもとに新たに切り開かれたことが原因だった。
ここはフランチェスカの屋敷じゃなくて、明日の為に殺し合う必要なんてなくて、飼い主の目もなくて───
「(……ああ、でも)」
たった一つだけ重なる事柄。
あの叔父とやらはあれでいて、シャチの"家族"だった。
それをベポは何と言っていたか。
「(……いやだったのか、？)」
Aは己の右肩に手を滑らせる。
大きく切り裂かれたような傷痕が残る肌は、他の部分と比べて少しかさついていた。
《死にたくねェ!!死にたくねェんだよおれァ!!》
《故郷に、"家族"がいるんだ!!産まれたばっかのガキだって!!》
《約束したんだ、お前を殺せばここから出してくれるって!!また会えるんだ!!だから、頼む…!!死んでくれ…!!》
《死ねぇぇええええ!!!!》
とある人間の───この右肩に傷痕を残した男の、今際の際の音。
明確な殺意と、怯えと、それから少しの悲愴を以て、彼は与えられた武器で半狂乱に斬りかかった。
袈裟斬りの要領で刀身がズブリと肩の肉に沈む。
刃越しに伝わるその感触が余程吐き気を催すものだったらしく、青ざめた男の顔が更に苦悶で歪んだ。
直後にその首を掻き切ったのは、自分。
呆気なく倒れ伏した体は打ち上げられた魚のように痙攣して、口から吐瀉物と血の
そうして、また一つ日を越えられた。
「……かぞく、だったから…」
理由があるとすれば、それが答えだ。
数え切れない血みどろの記憶の中で真っ先に思い出したということは、名も知らぬ一人の男に少なからず感化されたものがあったからか。
"家族"という言葉を知るきっかけは、間違いなくあの断末魔の瞬間だった。
意味なんて教えてくれる人は誰もいなかったから、次々と屋敷に連れてこられる人々の叫びから、きっと死の間際に思いを馳せるほどの大きな何かだったのだと悟った。
加えてベポが教えてくれた意味を踏まえれば、その叫びは彼等の願いであったということを数年越しに思い知らされた。
────私は私の願いの為に、他者の願いを踏み躙ったのだ
浮き彫りになったのは生き足掻いたことへの代償。
強いられた殺し合いの勝者に与えられたものは、血の海に浮かぶ屍の上に築き上げられた残りの人生。
常人であればとても正気ではいられないだろう、根深く食い込んだ罪の意識だ。
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夜 - とても面白くていつも続きを楽しみにしてます。これからも作者様のペースで更新頑張ってください！ (3月20日 19時) (
レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あーねさん» ありがとうございます！そう言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しいです…！更新頑張らせていただきますッ！ (11月9日 0時) (レス) id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あーね(プロフ) - 一気読みしてしまいました…！どこか儚くて美しい表現力に痺れました！マイペースに更新頑張ってください…！ (11月8日 18時) (レス) id: a59d493da5 (このIDを非表示/違反報告)
いの(プロフ) - あさん» 閲覧していただきありがとうございます！頑張らせていただきますー！ (10月20日 6時) (レス) @page9 id: 38b3649016 (このIDを非表示/違反報告)
あ - いつも読ませていただいてます！これからもお願いします！ (10月15日 21時) (レス) @page8 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いの | 作成日時：2023年9月7日 0時
