僕の灯が消えるまでに(in×ar) (ページ30)

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砂時計ページ30

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「……っ……」

目を開くとそこは何も変わらない僕の部屋だった

近くに置いてあるデジタル時計はあれから一日しか経っていないことを教えてくれた

「夢、だったんだ……」

(よかった……本当によかった……)

ｶﾞﾁｬ

「……大貴？」

「ん？」

「お母さん、仕事行ってくるね。

もうすぐ来てくれると思うから」

「……はい。行ってらっしゃい」

今、家に一人

出るなら今

だけど、僕がいないことが知られたら
騒ぎになるんじゃないかな……

ちゃんは来てくれるのかな

会えるのかな

まだ自由の利く体を起こして
ベッドに腰かけるように座る

スマホのランプが点滅することもなく

まるでさっきの夢に戻ったよう

スッー………

「っ…？…」

何かが聞こえた気がした

それは不思議な体験だった

「どうして………」

さっきまではなかったはずのソレ

(……僕、やっぱり……)

立ち上がるとクローゼットから適当な服を見立てて着替えた

そのまま置いてあったリュックを背負うと部屋を出て
まっすぐ玄関へ向かい昨日と同じスニーカーを履いて外へ出る

「っ……」

「……」

ちょうど門を通った女の人と目があった

この人は今日から来てくれると言うお手伝いさんなのか

「……初めまして。大貴さん、ですよね？」

名前を知っているということはそういうことだ

タイミングが悪い
僕はこれから行かなくちゃいけない

でもここで逃げたら……

「どちらへ行かれるんですか？

顔色も悪いですよ。お部屋に戻りましょう？」

連れ戻される

そう思ったら

「…っ…」

「っ…大貴さん！！」

その人を振り切って走っていた

本当は走ってはいけないと分かっている

後ろから声が聞こえて追いかけてくるあの人に追い付かれないよう必死で一目散に走った

次第に息も苦しくなってきて
このままだと倒れる

僕は細い道に身を隠すよう
壁に背中を預けてしゃがみこんだ

「っはあ、はぁ、はあ、…」

本当に近いんだな

僕の期限

でもあの話が本当なら

僕には少し時間がある

砂が落ちきるまでは生きていられるんだ

昨日まではなかったはずの

デジタル時計の横に置かれた

僕の砂時計

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